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年1000%成長のオンラインピアノレッスンアプリ“VIP陪練”大解剖ー後編、レッスン体験ルポ - 中国EdTech#20

はじめに

前編では、今急成長中の中国音楽教育スタートアップ上海妙克信息科技のサービス「VIP陪練」を紹介しました。VIP陪練は、アプリを用いてオンラインでピアノなどの楽器のレッスンをするサービスで、リリース以来ユーザー増加率は毎年1000%と爆発的スピードで拡大しています。前回の記事に続いて後編では、筆者がVIP陪練のピアノレッスンの体験授業を実際に受講したルポを書きたいと思います。



今回扱うトピック

  • レッスン体験ー日本人ピアノ初心者が中国のオンラインピアノレッスンを受けてみた
    • レッスンを予約する
    • レッスン開始!
  • レッスン後は先生と生徒が相互レビュー
    • 先生をレビュー
    • 先生からも生徒の成績と進捗がフィードバックされる
  • 最後に筆者の感想



レッスン体験ー日本人ピアノ初心者が中国のオンラインピアノレッスンを受けてみた

レッスンを予約する

アプリをダウンロードすると、オレンジ色のアイコンを押してアプリを起動します。まずはアカウントを作成します。アカウントを作成すると体験レッスンを無料で予約出来ます。

予約ボタンの際に記入するのが、以下の事項です。

  • 年齢:5歳未満、5-16歳、17歳以上から選びます。VIP陪練は公式にはサービスの対象年齢は5-16歳としていますが、5歳未満と17歳以上も受講可能なようです。
  • ピアノの経験期間:3か月以上か以下か
  • 楽器:ピアノ、ヴァイオリン、アコーディオン、古筝が学べます
  • 日時:当日や翌日は予約が埋まっていることが多いです

また、レッスンに対する要望も記入でき、

  • レッスンの終わりに先生が保護者にレッスンのまとめを報告する
  • たくさんの曲を練習する
  • 一曲を集中的に練習する
  • コンサート向けに練習する

などの選択肢にチェックを入れられます。重要な要望が選択式で用意されているので非常に快適でした。また、記入式で自由に要望を書いて、レッスンをカスタマイズすることも可能です。

予約すると即、アプリ内のメッセージでコーチのwechatを追加するよう指示されます。このコーチと呼ばれる人は、授業外で面倒を見てくれ、スケジューリングや先生の手配をしてくれます。コーチのwechatを追加すると、突然電話がかかってきました。

授業開始2時間前までにコーチのwechatを追加し、連絡を取らないと授業が自動キャンセルになってしまうそうで、連絡が遅かった筆者の授業がキャンセルされてしまったので、リスケジュールしてくれました。

また、ピアノの経験や授業の内容や形式の希望、先生の好みなどあるかを聞かれ、男性と女性の先生どちらがよいか選ばされました。これらのヒアリングに基づいて生徒にあった先生を割り当ててくれます。授業内容について事前に登録した要望を先生に共有してくれるので、それを配慮した授業内容になります。wechatでのやり取りは堅苦しくなく、気楽に連絡できるのでスムーズです。授業を受講し始めたら毎回先生は自由に選べます。

予約が完了すると、レッスンで演奏する曲の楽譜を授業の前にアップロードする必要があります。「楽譜をアップ」ボタンを押して、アプリ内の楽譜を選ぶか、自分で用意した楽譜をアップしておけば、先生が事前に予習してきてくれます。アプリ内の楽譜はかなり充実しており、ピアノ演奏者向けの楽譜本の電子版がたくさん収容されていました。また、楽譜を見ながら演奏している音声を聞くことができ、ピアノを演奏している動画も見られるので、指の動きも見て学ぶことができます。

レッスン開始!

こちら(左下)がレッスン中の画面です。先生の側で生徒のスマートフォンに表示する画面を次々と変えることができ、ペン(画面の中ではピンク色の筆跡で表示)でリアルタイムで書き込みながら指導してくれます。筆者は初心者なので、まずは音符の読み方から。岩の絵の中に五線譜が埋め込まれており、一つずつ音符を読み上げさせられます。筆者が「ドーーー♪」「ファーーー♪」「シーーー♪」とピアノを弾いていくと、先生はベタ褒めしてくれました。生徒は幼児や小さな子供が多いため褒め慣れているのでしょう。
次の画面は音符の長さの練習で、筆者が聞き取れない単語などを漢字で書き混んでくれました。外国人ということで、いろいろ気をつかってくれる人格者の先生でした。

次は、ハローキティがキノコを採取している画面です。これも同じくキノコに書かれた音符をピアノで弾きます。

先生は音感がいいのか、生徒が音階を間違えると必ず指摘してくれます。先生の手元にはピアノはないので、声で、例えば「ドーミーソー」と歌って教えてくれます。

そして反復的に楽譜を読む練習をひたすらしていきます。

最後にこちらの曲を演奏しました。この楽譜は、事前に筆者が選択してアプリ上でアップロードしたものでした。楽譜はアプリ上にある楽譜集の中から選べるので、教材費はかかりません。筆者は事前に練習してきたのである程度流暢に演奏でき、高評価を得ました。先生も事前にこの曲を予習してきてくれたので、いくつか楽譜の読み方などの注意点を教えてくれました。ここでレッスン終了。



レッスン後は先生と生徒が相互レビュー

先生をレビュー

授業が終わると先生のレビューを書かされます。

  • なじみやすい
  • とても忍耐強い
  • 声が素敵
  • 爽やかで朗らか
  • 情熱的
  • インタラクティブ

の選択肢が該当したので、これを提出しました。「声が素敵」の項目があるなど、評価項目は教師の性格やコミュニケーション力を評価するものが多いです。先生を評価する仕組みがあるので、プラットフォーム上で先生のこれまでの評価をチェックできるようになっています。この評価制度によって授業の質が上がるように動機付けされているのでしょう。

先生からも生徒の成績と進捗がフィードバックされる

また、授業後に先生からからも生徒の評価が送られてきます。

筆者の評価は

  • 楽譜の読み
  • 両手の動きの調和
  • リズム感
  • 音楽的センス
  • 授業の出来

のすべてが星5で、総合評価がA+でした。さすがに「評価甘すぎ!!」と思いましたが、ほめて伸ばすタイプの先生に教わるのは楽しく、また授業を受けたくなってしまいました。先生からのアドバイスとしては、ゆっくりつっかえることなく演奏する練習をするようアドバイスされ、週に200分間の練習をおすすめされています。また、評価の画像の下にシェアボタンがあり、WeChatのモーメンツなどで簡単にシェアできるようになっています。このようにユーザーの口コミ(オンラインでのシェアなど)によって新規ユーザーや認知獲得を狙っているのがわかります。



最後に筆者の感想

メディアでは科学技術を使っているなどと言われていますが、実際に体験してみると人海戦術な部分が多いです。AIを活用している様子もありませんでした。

しかし、体験授業後にまめに営業の電話がかかってきたり、WeChatでメッセージを送ってくることで、ユーザーの好感度を上げ、巧みなセールストークで受講生を獲得する仕組みはなかなかよくできたものでした。テック企業を名乗りながらも実際は人を使った良質なサービスとビジネスをしている企業であると感じました。

VIP陪練の従業員によると、生徒は初級レベルがメインであり、VIP陪練のサービスはアプリの形式をとるため初級者に適しているそうです。授業を受けた筆者の感想としても、先生にとってピアノの技術的な能力よりもコミュニケーション能力のほうが重要であり、実際にそのような先生が集められているのかもしれません。

マーケティングに関しては、WeChat等での拡散を重要視しているのが様々な場面で見られました。まずは価格設定です。WeChatのモーメンツで投稿したら割引になります。これは操作としては、非常に簡単ですが拡散力はかなりあります。VIP陪練の生徒の約半数は紹介によって入会した生徒です。口コミでこのサービスが拡大に成功したのは、ユーザーのロイヤリティを高める、SNS上でのシェアのハードルを下げる、授業料ディスカウント等のインセンティブを付けるなどの相乗効果の結果でしょう。

まとめると、VIP陪練サービスの質はある程度良質であり、ビジネス面でも強みがあるので今後も成長は続いていくのではないかと考えられます。現時点ではVIP陪練の技術利用はまだそれほど進んでいないようですが、今後開発が進めば現状のサービスを補強する技術が活用されるかもしれません。そうなればさらなるサービスの成長も見込めるでしょう。

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