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中国オンライン職業教育の見取り図と時価総額2位の中国EdTech企業のヒミツ|中国EdTech#47

オンライン職業教育という言葉はほぼ全ての日本人にとって聞き馴染みがないかもしれません。今回解説するこの分野は、日本でいうところの資格学校のオンライン版とほとんど意味が同じです。中国においてオンライン職業教育はEdTech市場の4分の1を占める主要分野であり、中国EdTechにおいて重要な位置を占めています。今回の記事では、オンライン職業教育の解説に加えて、中国EdTech企業の中で時価総額が2位の中公教育もこの分野に属しており、この企業の優良な経営状況の秘密についても解説します。

今回のトピック

・職業教育とは?
・中国オンライン職業教育の市場規模
・オンライン職業教育カオスマップ
・ビジネス面からみたオンライン職業教育―中公教育の事例

職業教育とは?

中国の教育業界には職業教育と呼ばれる分野がありますが、日本語の資格教育に近い意味で用いられています。職業教育の厳密な定義は、資格試験および職業技能の教育であり、以下の分野は含まれません:企業研修等のB向け教育機関、純粋な言語教育学校、公立の専門学校や高等職業学校。

中国オンライン職業教育の市場規模

2019年の中国職業教育全体の市場規模は2688億元に、そのうちオンライン職業教育の市場規模は393億元に達すると予想されています(正式なデータはまだ公表されていません)。公務員試験や資格教育に対しての購買意欲も高まっていることや、政府がオンライン教育と職業教育に対して援助をしていることが、成長を支えている要素であると考えられます。


出典:艾瑞咨询より作成。2019年のデータは艾瑞咨询による推定値

また、オンライン職業教育の年間成長率は2016年から20%台(下図青線)と高い成長率を維持している一方、オフラインの形式をとる従来の資格学校なども含めた職業教育全体の成長率は2016年以降10%台前半(下図青線)に留まっています。


出典:艾瑞咨询より作成。2019年のデータは艾瑞咨询による推定値

職業教育のオンライン化率、すなわち職業教育全体に占めるオンライン職業教育の市場規模の割合をみると、2013年から漸増しており、じわじわとオンライン化が進み、市場に受け入れられていっているのがわかります。

オンライン教育の利用率は1・2線都市(北京や上海などの大都市)において最も高いですが、近年は3線都市(地方都市や農村など)以下にも徐々に普及しています。オフラインの校舎型資格学校では、地方や農村において質の高い教師の獲得がむづかしく、拡大のためには校舎新設のコストもかかります。一方、オンラインであれば録画済みの授業映像は全国統一のものとなるので授業のクオリティー担保も容易であり、ネット環境のある人であれば誰でも受講できるので地理的な制約がないなど様々な利点があります。これに合わせて、地方の市民もオンライン教育を受容してきていることなどが、職業教育のオンライン化率増加の原因となっていると考えられます。


出典:艾瑞咨询より作成。2019年のデータは艾瑞咨询による推定値

以上をまとめると、中国の教育市場全体が拡大傾向にあり、そのオンライン化率は年々上昇していっていますが、職業教育の分野においてもこのことはあてはまるのでしょう。下の図において、2019年以降は推定値なので2018年のデータを見ると、職業教育はEdTech市場全体に占める割合が24.8%となっており、高等教育(53.3%)についで2番目に大きい分野となっています。中国EdTechビジネスには、比較的高い年齢層から低年齢の方向へと市場が広がり続けている傾向があり、K12がEdTech市場占有率をあげ、高等教育から占有率を奪う構図となっていますが、職業教育は安定的に4分の1くらいの占有率をキープしています。


出典:艾瑞咨询のデータをもとに作成したグラフを現状はどんなサービスが主流なの?- 今後の3つのトレンドとは? - 中国EdTech #2より抜粋。2019年以降は推定値

中国EdTech市場全体のトレンドについては今回の記事では詳しく触れませんが、以下の記事で解説しているので、ご覧になってください。中国EdTech市場全体の市場規模推移なども掲載しています。

市場規模は日本の30倍!?ー成長要因とリスクを解説 - 中国EdTech #1

オンライン職業教育カオスマップ

オンライン職業教育企業は大きく以下の3種類に分類できます。

  1. プラットフォーム系:テンセントが提供する騰訊課堂など、その企業自体が授業を提供するのではなく、プラットフォーム上でユーザーが授業を提供できるようなサービス

  2. コンテンツ提供系:自社の教師が授業を提供する塾

  3. ツール系:辞書アプリの有道など、授業ではなくアプリで自習をサポートするようなサービス

この分類にもとづいて作成されたカオスマップが下図になります。


出典:艾瑞咨询より

プラットフォーム系

プラットフォーム系のサービスでは職業教育のみならず学校教育における科目や受験などを含めかなり広範な分野のコンテンツが提供されています。代表的なサービスには、騰訊課堂、CCtalk、中国大学MOOCが挙げられます。これらのサービスはいずれも、新型コロナウイルス流行後に大きくユーザー数を伸ばしており、2020年2月の教育系アプリのユニークユーザー増加率TOP10にランクインしました。これらのサービスの詳細は以下の記事で取り上げているのでご覧ください。

コロナを経験したEdTechトレンド展望 中編 - 中国EdTech#33

また、以下の記事では特に騰訊課堂についてテンセントのEdTech事業全体における位置付けを解説しています。

BATのEdTech戦略まとめ (1)(騰訊・アリババ編) - 中国EdTech #7

コンテンツ提供系

オンライン職業教育の3分類のうち、職業教育市場の根幹となっているのはコンテンツ提供系なので詳しく分類を見ていきます。

  1. 職業資格系:専門的な資格の必要な職業の試験を教えるもの。さらに採用試験系と資格試験系に分けられる。
  2. 職業技能系:語学やプログラミングなどの広い範囲の職業に関わるもの。

まず、職業資格系の採用試験系には、公務員試験の競争が激しい中国において職業教育における最重要な分野として公務員試験の塾が挙げられます。それ以外には、教員や銀行などの採用試験対策コースなどのサービスがあります。中国教育企業の中でも売り上げや時価総額の面で上位に入る中公教育は代表的な企業であり、公務員試験から語学、医学まであらゆる資格試験に関する授業を展開しています。

次に、資格試験系には医学、教育、司法などの資格を取るための塾があります。これらは各専門分野に特化した塾もあれば、中公教育のように分野横断で授業を提供している 塾もあります。資格試験系の語学分野は特に市場は大きく、中国の代表的なEdTech企業である新東方在線もこの分野において英語の資格試験の授業などを展開しています。語学系サービスは以下の記事で詳しく解説しています。

語学学習サービスを解説!ー3つのトレンドと注目サービス - 中国EdTech #4

そして最後に、資格取得を目的とはしていないものの仕事に使うスキルとして身につけたい内容を扱ったものが職業技能系です。語学系で試験ではなく会話に特化したものはここに分類され、上場企業の51Talkやユニコーン企業のVIPKIDなどのオンライン英会話サービスはここに位置します。これらについても上の語学学習についての記事に詳しいです。また、プログラミングなどのIT系分野のオンライン塾も近年大きく成長しています。

ツール系

次にツール系のサービスについては、語学系の辞書や、法律や医学などの専門分野の辞書のアプリなどにユーザーが多いです。また、資格試験などの過去問が解ける問題集アプリなど多様なアプリがこの分野に含まれます。ただし、収益性に関しては授業単価数万元に達するコンテンツ提供系のビジネスに比べると全体的に劣勢であり、市場規模に占める割合は低いと考えられます。

ビジネス面からみたオンライン職業教育―中公教育の事例

資格系の職業教育を提供する企業の中で最大の企業である中公教育の売り上げを見ると、中国のEdTechビジネスは収益化が難しい分野が多く、多くの企業は赤字となっています。代表的な企業であっても利益率を高めるのに苦戦していますが、黒字化に成功しています。中公教育は代表的な4社の中国EdTech企業の中で最も高い売上高営業利益率を記録しています。分野に着目すると、中公教育以外の3社K12を中心に事業を展開しており、中公教育のみが職業教育分野となっています。中公教育の公務員試験対策の授業を例にとると、コース単価は2~3万元とかなり高くなっています。大手のK12サービスのコース単価は一般的に数百元ほどなので、資格試験の単価はかなり高いことがわかります。

中公教育の公務員試験対策コースには、オンライン授業に合わせて試験直前の合宿などがパッケージ化されていることが多く、単純なオンラインの録画授業やライブ授業以外の付加価値をつけたものを提供することで単価の引き上げを図っているのでしょう。公務員試験等の資格試験に対する受験生の必死さが、より良い教育への需要を支えているのでしょう。また、このような単価の引き上げは他の職業教育企業も行なっており、職業教育はオンラインでも高付加価値・高単価にしやすくビジネスが回りやすいEdTech分野であると言えるでしょう。

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