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バイトダンスバイトダンスのEdTechサービス紹介3ーK12分野|中国EdTech#45

 
今回までの三回の記事では、バイトダンス傘下のEdTechサービスを分野ごとに紹介してきました。前回の記事ではバイトダンスが力を入れており、若い市場である早期教育分野について解説しました。最終回である今回のテーマは、K12向けサービスとその他の分野についてです。

今回のトピック

・K12向けオンライン授業
・投資先のサービス:極課大数拠
・その他
・まとめ

K12向けオンライン授業サービス

K12向けのオンライン授業サービスはEdTechの中でも最大級の分野であり、下のK12分野サービスの分類図では右上の「オンライン講義」の枠と一致します。この分野の競合には、中国最大のEdTechスタートアップ猿力教育科技の猿輔導、EdTech企業最大手の好未来(TAL Education Group)が出す学而思課堂、宿題添削アプリが大きなシェアを誇る作業帮の作業帮直播课、ネットイース傘下である有道の有道精品课などがあり、非常に激しい競争が繰り広げられています。

K12分野は客単価が高いものの競争が激しく、新規顧客獲得が最も重要な目標の一つとなります。新規顧客獲得のための施策としては大きく二種類あり、広告と授業料割引のキャンペーンがありますが、広告合戦は近年市場の拡大とプレイヤーの増加に合わせて激しさを増しています。2020年のK12向け夏期講習の各企業の広告費用の合計は50億元(約776億円)を超えるだろうと言われています。
K12向けオンライン授業は授業自体の差別化がむづかしく、テレビ番組とタイアップを組んだり、有名なスポーツ選手のスポンサーになったりなどして知名度の向上を図っています。そして、大規模な広告キャンペーンに資金をどれだけつぎ込めるかが顧客を獲得できるかに大きく影響しており、資金力勝負となっています。


中国のネット番組のポスター。提携先として、清北網校に加えて前回の記事で紹介した瓜瓜龍英語が挙げられている。
出典:妻子的浪漫旅行 第4季

バイトダンスは2019年5月に2000万元かけて買収した清北網校を皮切りにK12向けオンライン授業サービスに参入しました。清北網校は清華大学と北京大学という中国のトップ2の大学の名前を冠している通り、両校の卒業生のみ教師として採用している、というのを売りにしています。授業形式は、大規模授業に合わせて小規模クラスでの演習を組み合わせたものになっています。2019年12月には、小規模授業に特化した大力小班というサービスもローンチしました。また、2020年8月には清北網校の小規模授業専用サービス清北小班をリリースし、徐々にサービスを充実させています。


「講師の100%が清華・北京大学出身の先生」と書いてあるロゴ
出典:http://m.qzstc.com/p_wangxiao/10969.html

K12学校向けスマート教室サービス

極課大数拠(FCLASSROOM)はK12の学校教育において活用されているサービスです。
当社は、AIによる画像認識技術と自然言語処理技術をベースに、課題や試験などのデータを動的に収集・分析し、学生の能力に応じた授業を実現する「EI」というスマート教育サービスや巨大なオンライン問題集を提供しています。
2018年11月現在、極課大数拠は3,500校以上のK12学校で570万人以上の教師、生徒、保護者に利用されており、学校別の問題集は1,000万問以上、テストの宿題データは2,000万セット以上に達しているとのことです。


極課大数拠のクラス管理画面。平均点や、「注意が必要な学生」、重要な問題などが表示されている。
出典:芥末堆

その他

ここまでに紹介した英語、早期教育、K12といった市場の比較的EdTechの中でも主流のオンライン授業系の分野以外にもたくさんのサービスを出しているので、その一部を紹介します。

好好学習

2019年12月に好好学習という有料オーディオコンテンツプラットフォームがローンチされました。このサービスは、オーディオコンテンツとして最大手の喜馬拉雅の教育分野コンテンツのライバルとなるものですが好好学習のほうがより包括的に教育コンテンツを持っているのが特徴です。

互動百科

2019年8月に、互動百科というWikipediaに類似したオンライン百科事典プラットフォームを買収しました。中国本土からWikipediaにはアクセスできず、代わりに百度が運営している百度百科がよく利用されています。プラットフォーマーとしてのライバルである百度に対抗する狙いもあるのでしょう。

上海市普陀区とスマートキャンパスプロジェクト

2020年3月26日、上海市普陀区政府とバイトダンスは、スマート教育実証区を共同で建設することに合意しました。
普陀区政府によると、スマート教育イノベーションセンター(智慧教育创新中心)、未来スマート教育ラボ(未来智慧教育实验室)などの施設を設立し、教育の情報化を推進するとしています。また、教育行政、教授研究、キャンパス管理(授業や教務等)、家庭と学校間のコミュニケーション、成人教育、大学教育などの分野でバイトダンスと提携し情報化教育の技術を導入していくと発表しています。

これらの分野において、民間でもいくつものサービスが出ていますが、バイトダンスにとっては初めて取り組む分野がほとんどです。とはいえ、バイトダンスの莫大な資金力と人材資源を活用して公的な事業に入り込むことで、さらなる影響力を持っていくことでしょう。

バイトダンスは2018年5月に、スマートキャンパスおよび教育向けクラウドサービス企業の晓羊教育に投資しています。当企業はAIを活用した個別最適化カリキュラムを作るなどの機能を備えたクラス管理プラットフォームなどといったスマートキャンパスサービスを提供しています。上海市普陀区の事業では、もしかしたら晓羊教育のサービスを使うなどの連携があるかもしれませんし、もしくはそのノウハウを生かして新しいサービスを作るかもしれません。

まとめ:プラットフォーマーとしてのプレゼンスを高めるには

今回までの3回で紹介してきたサービスの内容からわかりますように、バイトダンスは非常に広い顧客の年齢層・分野に向けたサービスを包括的に出しています。これを大きな視点で見ると、中国のITプラットフォーマーとしての覇権の取り合いの様相が見えてきます。
まず、評価額や売り上げの規模に加えて事業展開や投資の範囲の広さからも、バイトダンスは中国最大規模の企業であるテンセントやアリババに肩を並べる新たなプラットフォーマーとなる可能性を持っています。EdTech分野においても、テンセントとアリババにバイドゥ(百度)を加えたBATが、事業開発や投資を通して激しい競争を繰り広げており、バイトダンスも近年そこに加わろうとしています。
中国EdTech主要勢力の中でも特に積極的に投資や事業展開をしているテンセントの投資する有力EdTechスタートアップをベンチマークとして新規サービスをリリースしています。以下の図に示した、テンセント傘下のVIPKIDと猿輔導は世界最大規模のEdTechユニコーンであり、英語教育とK12オンライン塾の領域は中国EdTech業界でも最も規模の大きい部類の領域です。プラットフォーマーの一角となりつつあるバイトダンスがテンセントやアリババに追いつくためには後発ながらも、EdTech業界の中でリーダーとなることは一つの重要な条件なのかもしれません。

おわりに

バイトダンスはK12向けオンライン授業分野ではかなり後発であり、厳しい戦いとなっています。バイトダンスはSNS等の大量のアプリを運営しており、そこには数十億人規模のユーザーがおり、他のサービスからのユーザー流入が期待されてきましたが、今のところうまくいっている様子はありません。一方、EdTech全体に対してかなり積極的な姿勢を持っている上に、資金は潤沢に有ると思われるので、今後マーケティング面で大規模な施策を打つかもしれません。今後のユーザー獲得とサービスの成長が、他アプリとのシナジーによって生み出されるのか、広告キャンペーン、あるいはそれ以外の方法によって生み出されるのかは注目していきたいです。

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