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バイトダンス傘下のEdTechサービス紹介2ー幼児教育、瓜瓜竜英語|中国EdTech#43

 
前回の記事ではバイトダンスが特に力を入れている分野である英語教育について解説しました。

今回のテーマは早期教育分野についてです。バイトダンスが今後積極的に発展させていくと表明している瓜瓜龍英語というサービスと、早期教育の中でも特に注目に値するAI啓蒙教育分野について解説します。

今回のトピック

・瓜瓜龍英語ーAIを活用した英語早期教育アプリ
・AI啓蒙教育アプリ登場の背景
・瓜瓜龍英語にかけるバイトダンスの思い
・バイトダンスが提供する英語以外のAI啓蒙教育アプリ
・AI啓蒙教育アプリにおけるAIの活用
・おわりに

瓜瓜龍英語ーAIを活用した英語早期教育アプリ

2020年3月にバイトダンスは、教育スタートアップの猿輔導が運営する斑馬AI課(旧斑馬英語)をベンチマークとした、乳幼児向けの英語教育アプリ瓜瓜龍英語をリリースしました。斑馬AI課と瓜瓜龍英語はどちらも2~8才の就学前児童を対象としており、価格やサービスも酷似しています。
瓜瓜龍英語のアプリの内容は、英語の歌を聴いたり、単語カードを使ったり、録画されたネイティブスピーカーのスキットを見たりするものです。これらのコンテンツは低年齢の児童向けに、キャッチーでわかりやすく作られています。

AI啓蒙教育アプリ登場の背景

K12を対象とした英語のオンライン授業サービスはEdTechの中でも比較的早くから普及し始めましたが、VIPKIDやGoGokidなどの英語マンツーマンレッスンは、教師が教えるスタイルをとっているのでコストが高くなり、授業料も割高になってしまいます。一方、AIと録画授業を組み合わせたアプリの形式ならば、教師の数を大幅に削減できます。現状ではAI英語教育アプリには、学習を補助するチューターがついており、完全無人でカリキュラムを進められるわけではありませんが、人件費のコストはかなり抑えられ、価格はマンツーマンレッスンに比べかなり安くなっています。

また、同時期に、市場規模の大きいK12(小学生から高校生)向けのオンライン授業は比較的業界の歴史が長く、プレイヤーが固定化しつつあったため、より低年齢向けのサービスに手を広げる機運が高まっていました。

そんな中、斑馬英語(現在の斑馬AI課)を先駆けとして英語教育においてAI啓蒙教育アプリが生まれました。斑馬AI課は、中国最大級の市場価値を持つ教育スタートアップ猿輔導が運営する、2~8才の児童向け英語学習の代表的なアプリです。2017年にローンチされ、それまで斑馬シリーズと呼ばれてきた「斑馬英語」「斑馬思維」(ロジック)「斑馬語文」(国語)の3つのアプリが2020年2月に合体して「斑馬AI課」が生まれました。英語、ロジック(算数)、国語の三つの分野において、バイトダンスも瓜瓜龍シリーズとしてアプリをリリースして対抗しています。


出典:斑馬AI課公式HPより
2017年の斑馬シリーズのリリース以来、中国EdTech業界の主要プレイヤーたちが続々と類似プロダクトをリリースし、AI啓蒙教育*分野の市場が成長してきています。

*「啓蒙教育」とは、一般に就学前の0~3歳児の教育を指しますが、現在各社の啓蒙教育サービスは対象年齢を2~8才としているので、本記事では啓蒙教育のさす学齢期は2~8歳までのことを指しています。なお、厳密には、3~6児の教育を幼児教育(幼教)、6~12歳児のそれを早期教育と呼びますが、広義の早期教育は0~12歳児の教育を指すので本記事では早期教育は広義の意味で使用しています。

下の表は中国EdTech業界の主要プレイヤーがAI啓蒙教育に参入した時系列を表したものです。2017年にリリースと業界で先手を切った斑馬AI課は、現在代表的なAI啓蒙教育サービスとなっており、2020年3月の売り上げは、斑馬AI課全体で3億元で、3月時点のユーザー数は50万人でした。バイトダンスを含め後続の企業からすると、2年以上先にアプリをリリースした猿輔導に大きくリードされており焦りを感じていると思いますが、バイトダンスはこれからさらに瓜瓜龍英語にリソースを割いていくと表明しており、強気の姿勢です。

瓜瓜龍英語にかけるバイトダンスの思い

瓜瓜龍英語は、人気のテレビ番組やネット番組ともパートナーシップを組んで、広告に力を入れています。バイトダンス教育事業責任者は今後3年間は利益を度外視して教育に投資していくと述べており、2020年に瓜瓜龍英語に関して20億元という巨額の予算を組んでいるといいまう。このうちの多くは広告費に投入されていると考えられますが、今年のうちに利益を出せないとしても、新規顧客を大量に獲得し、継続させれば数年ないしは10数年のうちに埋め合わせることは可能でしょう。バイトダンスは短期的な損失を顧みずキャンペーンや広告を打っていくとしています。また、瓜瓜龍シリーズには現在、英語・ロジック(算数)・国語の科目がありますが、今後音楽が加わる予定であると報じられています。

バイトダンスが提供する英語以外のAI啓蒙教育アプリ

瓜瓜龍思維は瓜瓜龍英語同時期にリリースされたアプリで、同様に幼児向けにロジックや算数の基礎を学ばせることを目的としています。

このアプリも、アプリで動画コンテンツを視聴したり、クイズを解いたりなどゲーム感覚でカリキュラムをこなしていく形式をとっています。例えば2歳児向けの授業内容は、色や数字を認識するためのゲームなどで、ゲームをしながら自然と学習することができるようになっています。デジタルネイティブの子どもにとっては、このスタイルの教育はスムーズに受け入れられるでしょう。また、アプリはゲーム感覚でカリキュラムをこなせるということを重視しているので、子どもの段階で数学が嫌いになるといったリスクも少ないでしょう。

そして、国語教育アプリである瓜瓜龍語文も2020年8月にリリースされました。このアプリでも同様にアニメをやゲーム形式のクイズを通して、詩・ピンイン(日本語のひらがなに当たるもの)・漢字や中国語(標準語)の基礎を学ぶことができます。

AI啓蒙教育アプリにおけるAIの活用

AI啓蒙教育アプリのサービスは広告やホームページにおいて、AIによる授業を謳っていますが、AIの活用度はサービス間で異なります。斑馬AI課や瓜瓜龍英語はAIの活用度は比較的低く、これらのアプリでは基本的に単語読み上げの時に音声認識のAI技術が用いられている以外には、録画された動画を視聴する授業の際、先生と生徒の双方向のやり取りは少なく、生徒の個性に合わせたコンテンツの最適化などはあまり行われていません。

一方、叮咚課堂やGogoTalk哈佛外教課などのサービスにおいては、本格的なAI授業が行われており、授業中の先生と生徒との双方向のやり取りが多く、生徒の回答などに合わせてAIが授業内容を最適化していきます。ところが、各サービスの公式サイトにはAIが具体的にどのように利用されているか、何に先進的な技術が用いられているかといった記載はほとんどないか、抽象的な内容にとどまっているため、これらのAI授業の実態を把握している保護者は少ないと考えられます。

すなわち、AI啓蒙教育アプリは「AIを用いていることを積極的に広告している幼児教育のアプリ」であると言えます。以上のことを踏まえると、AI啓蒙教育アプリという分野は幼児教育市場の中では「知育アプリ」(下の分類図中央)という分野の下位分野に属するものであると考えられます。知育アプリとは、広く生活習慣・詩の音読・計算・英語について、主にアニメ動画やゲーム形式を用いて学ぶアプリのことを指します。


詳しくは幼児教育について広く解説している、幼児教育サービスを解説!ー注目サービスと今後の3トレンド(前半) - 中国EdTech #9をご覧になってください。

おわりに

AI啓蒙教育アプリ業界は歴史が浅く、まだ市場が流動的ですので、今後AI技術をどのように教育に応用しているかが、消費者(すなわち保護者や生徒)にどのように評価されていくのかは、今後注視していく必要があるでしょう。

また、低価格化したEdTechサービスが増えていくことで、今後EdTechユーザーの少ない農村地域や低所得者層にも、学校外でも教育を受ける機会が増えていくことが予想されます。それによって都市農村間の教育格差がどれほど埋まって行くかにも注目です。

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