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バイトダンスのEdTech業界参入の歴史と今後の展望を解説します|中国EdTech#41

昨今、アメリカ政府によるTiktokへの米事業売却命令が連日報道されています。その影響を受け、欧州や日本でもTiktokの利用停止が議論され始めています。これまでTiktokの主要市場はアメリカ・インド・日本でしたが、2020年7月にインドでTiktokの使用が禁止されており、今回アメリカでも政権や議会が警戒感を強めたことで、Tiktokへの逆風が加速していると言えます。この逆風に立ち向かうバイトダンスは、今後どのような戦略を打ち出すのでしょうか。その有力な候補の一つが、EdTech領域での事業拡大です。バイトダンスは2018年にEdTech分野に本格参入して以降、ここ数年で急速に業界でのプレゼンスを高めてきました。バイトダンスの今後を占う上でEdTechは注目に値する領域なのです。

そこで今回は、バイトダンスのEdTech分野における事業展開の沿革について解説します。次回からは4回に渡ってバイトダンス傘下(自社開発および投資先)のEdTechサービスについて分野ごとに詳細を解説します。

今回のトピック

・バイトダンスの基本情報
・教育業界への関心を示す幹部たち
・ライバルに遅れをとったバイトダンスのEdTech業界参入
・教育分野進出に対して前向きな姿勢
・EdTech業界進出年表
・おわりに

バイトダンスの基本情報

まずは、にバイトダンスの基本情報をみていきます。創業は2012年で、同年にリリースした今日頭条というニュースアプリが最初のヒットアプリとなり、現在までにそのMAUは3億人に成長しました。その後も、高度なAIレコメンド機能を武器に3つの短編動画アプリ「火山小視頻(Vigo Video)」「西瓜視頻(Xigua Video)」「TikTok(抖音)」をリリースし、中でもTikTokの中国国内版である抖音(Douyin)は大成功を収め、現在ではMAUが7億人に到達しています。他のアプリも含めた成長は順調で、2019年末には、傘下のアプリのMAUの合計が15億人を超えたと宣言しています。
ユーザーの増加に伴い売上額も大きなものになっており、2019年のバイトダンスの売り上げは1400億人民元を超えています。その大部分が中国国内の抖音をはじめとしたSNS分野のサービスによってもたらされています。ソフトバンクビジョンファンドからも投資を受けており、評価額は最大で1400億米ドルで、世界最大のユニコーン企業とされています。


出典:IT桔子

教育業界への関心を示す幹部たち

SNSサービスを中心に売上を伸ばしてきたバイトダンスですが、近年は様々な業界に目を向けており、その重点分野の一つに教育があります。バイトダンス社員の李峰氏のコメントによると、CEO張一鳴が最も重点を置く分野は一つ目がAI、二つ目が自動車、三つ目がオンライン教育である、ということです。李氏曰くバイトダンスはかなり教育分野に情熱を燃やしており、オンライン英語レッスンサービスのGoGoKidにはすでに10億元をつぎ込み、2020年5月にリリースしたAI英語学習アプリの瓜瓜龍英語には年内に20億元相当のリソースをつぎ込む予定だとしています。
バイトダンスの教育領域への関心の強さは、投資動向からも知ることができます。対外投資も盛んに行なっており、IT桔子のデータによると、最も投資額の多い分野がSNSおよびメディア分野で、それに次ぐのが教育分野です。
また黒板洞察によると、バイトダンスは2014年以降に101件の公開投資を行なっていますが、そのうち教育分野は22件で件数において最多となっており、2位のSNS分野(11件)に大差をつけています。このデータからもバイトダンスが教育分野に大きな関心していることが見て取れます。


出典:36Krより

ライバルに遅れをとったバイトダンスのEdTech業界参入

現在、中国EdTech業界の主要勢力は大きく以下の三種類に分類できます。

  1. 古株の教育大手企業:好未来や新東方など
  2. プラットフォーマー:様々なIT分野に投資をしているBATやネットイースなど
  3. 巨大EdTechスタートアップ:急成長を遂げる、K12向けオンライン授業サービス猿輔導やオンライン英語レッスン企業VIPKIDなど

好未来や新東方などのいわゆる古株大手教育企業は、20世紀から教育業界で事業を展開しており、継続的に顧客を獲得して最大手企業となりました。近年のEdTech業界の拡大に伴い、2010年代前半頃からは有力スタートアップがテクノロジーを活用したサービスを提供し始め、プラットフォーム企業による彼らへの積極的な投資も実行されてきました。
こうした流れの一方、バイトダンスがEdTech分野に積極的に参入し始めたのは2018年でした。このタイミングは上記の主要3大勢力のどれよりも遅く、この頃には中国EdTech業界の成熟はかなり進んだ段階にありました。ところが、バイトダンスは強力なサービスがすでに出揃っているEdTech領域で既存のサービスに類似したプロダクトを次々と開発してきました。

教育分野進出に対して前向きな姿勢

前述のように、バイトダンスが教育業界に進出した時点で業界ではすでに有力なサービスがひしめき合っており、新規参入にはリスクが伴うと思われました。バイトダンス幹部はこの状況をどのように認識していたのでしょうか。
教育事業責任の陳林は、業界内で激しい競争にさらされているバイトダンスのオンライン一対一英語レッスンサービスのGoGoKidについて触れて、以下のように述べています。
「教育ビジネスにはまだまだイノベーションの余地があり、新たな付加価値と変化をもたらすことができるのはイノベーションだけである。GoGoKidはコスト削減のために技術実験を行っており、最終的にイノベーションが実現できれば、市場はひっくりかえるだろう。まだ検証段階のアイデアが多いが、ビジネスモデルとしては非常に大きな可能性と未来があると考えている。」
また、CEO張一鳴もBytedance創業8周年の公開書簡で、教育業界参入に関して後発であるという不安はないとした上で、「教育ビジネスにはもっと根本的なイノベーションが必要だ。新しい分野での大胆な実験は、常にビジネスを始めるための重要な兆候である」述べました。
このように彼らは、EdTech業界において勢力図を塗り替えるような革新的なイノベーションを生み出すことに勝機を見出しているようです。後発であろうともポジティブな考え方を示しており、バイトダンスは今後もEdTech業界でリーダー格を目指す動きを続けていくと考えられます。

EdTech業界進出年表

バイトダンスは、教育業界に本格参入した2018年以降、かなりのペースでEdTech企業に投資をしたり、サービスをローンチしたりしててきました。それらを時系列順にまとめたのが以下の年表です。オレンジ色に塗りつぶされているサービスは自社開発のもので、それ以外は、買収または投資の案件です。


出典:36Krをもとに作成

サービス開発について、その内容をみると、英語教育やK12向けオンライン授業など、市場規模の大きいものが多くなっています。また、AI分野のサービスもみられ、AIkidや瓜瓜龍シリーズなどはAI技術を使っていることを全面に押し出しているなど、会社としての重点分野が反映されています。
一方投資については、特徴的な案件として、実験的な大学教育を行っているMinerva Projectの資金調達ではリードインベスターとなりました。Minerva Projectはミネルバ大学を運営する企業で、4年間で7都市を移動しながらオンラインで授業を受けるというスタイルが注目を集めています。加えて、素質教育、B向けスマート教室プラットフォーム、学校向けSNSなど、EdTech業界の中でも多方面の投資が目立ちます。

おわりに

今回は、バイトダンス社のEdTech業界での動きについて、後発企業としての業界認識、サービス開発と投資に現れる特徴についてご紹介してきました。投資買収先サービスと自社開発のサービスの詳細については次回以降4回に分けて解説します。

参考資料

字节跳动:过去高成长,未来靠什么?
36Kr 最前线 | 字节跳动被曝最早明年一季度赴港IPO,相关负责人给予否认
字节跳动陈林:未来三年,教育业务不考虑盈利

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