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Smart Learning Environments for the Futureとは? 前編 - フィンランドEdTech #4

フィンランドでは、6Aikaというプロジェクトのうちのひとつに、Smart Learning Environments for the Futureがあります。これは、特にスマートラーニングの製品やサービス、技術を開発するEdTech企業が開発段階でユーザーとの共創することをサポートするプロジェクトです。
この記事では、Smart Learning Environments for the Futureの開始に至った背景や、プロジェクトの目的と概要を解説します。

今回扱う内容

  • Smart Learning Environments for the Futureが生まれた背景
  • Smart Learning Environments for the Futureの目的と概要
  • Smart Learning Environments for the Futureの流れ
  • Smart Learning Environments for the Futureから生まれた製品

Smart Learning Environments for the Futureが生まれた背景

近年、学びの場をより広い意味で捉えようという世界的な潮流があります。フィンランドでも、学校の教室に限らず、教室外での学びを取り入れていこうといった動きが見られています。また、インターネットの発達によって、学校に留まらず、家庭や公共スペースにおいても学習が可能になりました。
一方、教室での学習もより充実したものとなっています。例えばVRやARを使い、教室に持ち込めないようなものを擬似的に学習に取り入れる取り組みが始まっています。さらに、授業における教師の役割が知識を教えるティーチャーから生徒の学びを促進するファシリテーターに変化していくと言われる中で、ロボットによる教師の補助や代替という事例も見られつつあります。
このような、学習環境に積極的にテクノロジーを導入してより良い学習を実現しよう、というムーブメントを受け、そのためのビジネスの成長を促そうという潮流を背景に"Smart Learning Environments for the Future "というプロジェクトが始まりました。

Smart Learning Environments for the Futureの目的と概要

フィンランドでは、主要6都市を舞台に6Aikaというプロジェクトが進められています。都市化による課題を解決するため、企業や市民、政府などが連携を強化するというものです。そのプロジェクトのうちのひとつに、Smart Learning Environments for the Futureがあります。これは、特にスマートラーニングの製品やサービス、技術を開発するEdTech企業が開発段階でユーザーとの共創することをサポートするプロジェクトです。

このプロジェクトは、以下の4つの目的が定められています。
①学習やスマートラーニングの環境に関わるサービス、製品、技術を開発する企業のビジネス機会を改善する。
②6つの都市でユーザー中心の学習環境を開発する。プロジェクトは、企業、研究機関、教育機関、市、ユーザー間での共創のフレームワークを持つプロジェクトパートナーを提供する。
③共創のための機能的かつ明確なオペレーションモデルを開発し、実践の場においてそのモデルを確かめる。
④企業やその他の開発者との共創に対して開放的な学習環境を強調する。

また、学習環境に関する製品やサービスは、6つのカテゴリーに分類されます。
①スマートで持続可能な学習環境としての場所を開発すること
②効率的な場所の活用のためデジタルツールやテクノロジーを活用すること
③バーチャルの学習環境やARの活用
④学習や教育における分析
⑤スマートラーニングの環境下での関係性を築く製品
⑥学習環境としての街全体

Smart Learning Environments for the Futureの流れ

Smart Learning Environment for the Futureでは、共同開発・試験的導入のプロセスとして3種類のモデルが用意されています。この3種類は、学校側・市やエコシステム側、企業側の全てのニーズをカバーできるようにデザインされています。それぞれのモデルを簡単にご紹介します。

Challenge-based モデル

Challenge-basedモデルでは、学校が抱える課題を元に共同開発・試験的導入が行われます。学校側が提示した課題に対し、多くの企業が解決策となる製品・サービスを提案・応募します。その中から選ばれた企業が実際に学校との共同開発に進み、3-4ヶ月のプロジェクトを実施します。

Stand alone-pilotsモデル

Stand alone-pilotsモデルは、市やエコシステム側の特定の領域に対してのニーズがある際に採用されます。入札システムが採用されています。共同開発・試験の期間は特に指定されていません。

Customized モデル

Customizedモデルは、企業のニーズが元となってプロジェクトが行われる際に採用されます。Smart Learning Environment for the Futureの担当スタッフが、企業から集めたニーズを元に、それに対して共同開発・試験を希望する学校教員をマッチングするという方法で行われます。こちらも、共同開発・試験の期間は特に指定されていません。

Smart Learning Environments for the Futureから生まれた製品

1878年のヘルシンキを再現する

Smart Learning Environments for the Futureから生まれた製品の一つに、「1878」というゲームがあります。
2018年初頭に、ヘルシンキ市立美術館が中心となり、1878年のヘルシンキをARを使って再生しようというプロジェクトが始まりました。市立美術館に加えデジタルコンテンツ制作会社のExove DesignとVR・AR制作会社のZoanという2社が協力して開発されたプロダクトは美術館に展示されて多くの子供達の興味を誘いました。

このプロダクトは、1878年当時のヘルシンキの街並みを模したジオラマと、それに対応したAR機能を組み合わせたものです。子供たちは小さな模型の中を、ARを使うことで探索することができます。プレーヤーはゲーム内でキャラクターとなり、ヘルシンキ市内を散策できます。その中で、ヘルシンキの昔のホテルや駅の様子を見学したり、水道の建設や農場での仕事を体験したり、ヘルシンキにまつわる昔の話を聞くことができます。こうした斬新な展示を通し、子供たちは自分たちの住む街の歴史について興味をもち、理解を深めることができるのです。
Smart Learning Environments for the Futureという枠組みを土台とした企業と美術館の相互協力があったからこそ完成した展示だと言えるでしょう。

3DBear

3DBearは、Smart Learning Environments for the Futureに参加し、試験的運用の中で顧客からのフィードバックを効率的に得た企業といえます。

3D Bearが開発するのは、子供たちが3Dコンテンツを簡単に作成できるアプリです。子供たちは、熊やカボチャなどのキャラクターや四角や丸などの形をアプリの空間上に配置することができます。キャラクターの色やポーズは自由に変えることができるため、子供たちはオリジナルのデザインを作ることを通じて創造性を発達させます。さらに、作ったデザインを写真やビデオに撮ったり、3Dプリンターで印刷することで、デザインに込めた感情や想起した自分だけのストーリー設定を伝えることもできます。このアプリを通じて、子供たちは3Dコンテンツの作成スキルだけでなくストーリーを他者に伝えるスキルを養うことができるのです。また、生徒の心のケアの手段としての利用も想定されています。
3DBearは、Smart Learning Environments for the Futureを通じて学校での実証実験を行いました。アプリを使用した生徒からのフィードバックを直接得ることで、子供達のつまづきやすい点を発見し、アプリの改善に役立てることができました。

Lyfta

Lyftaは、世界中の様々な環境に置かれた人々の生活についての理解を助ける360度の映像コンテンツサービスを制作している会社です。現在は4か国に計10万人以上のユーザーを持つこのサービスも、開発段階でSmart Learning Environments for the Futureに参加していました。

このサービスを使うと、世界各地の人々の自宅や仕事場での生活の様子を映した360度の映像を見ることができます。また、映像の中に出てくる人をタッチすることで、その人の生活についての話を聞いたり、さらに関連する映像を見ることができます。このように360度映像を活用することで、世界の人々の暮らしをより明確にイメージすることができます。また、仮想キャラクターではなく実在する人物が出てくることで、生徒はより強く心を動かされ、共感を感じながら学習することができるのです。
LyftaはSmart Learning Environments for the Futureの実証実験期間において、教師と深く議論をすることができたために、製品のプロモーションにおいては、製品の技術力を宣伝するのではなく、製品を通じて生徒が得られるスキルに焦点を当てることが大切だという発見があったと、開発チームのメンバーは振り返っています。

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