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コロナを経験したEdTechトレンド展望 中編 - 中国EdTech#33

はじめに

第31回から、中国の学校教育およびEdTechビジネスにおける新型コロナの影響を、前編・中編・後編に分けて順番に解説しています。今回は中編です。前編はこちら

今回扱うトピック

  • コロナ下の学校教育はどう変わったか?
  • コロナウイルス蔓延の影響でオンライン教育が急加速
  • EdTechのどんなカテゴリーが伸びているのか?
    • オンライン講義:オンラインで自社の授業を提供している塾
    • 学習ツール:宿題の補助など
    • 授業映像プラットフォーム:ライブ授業やビデオ教材シェアのためのプラットフォーム
    • クラス運営プラットフォーム
  • EdTech利活用が進んだ地域特性
  • コロナを経ての中国EdTechの展望
  • 中長期的な展望
  • EdTech業界の構図はどうなるのか

前編では「学習ツール」までを解説しました。中編となる今回は授業映像プラットフォーム以降を解説します。


出典:艾瑞产业研究洞察を参考に筆者が作成

上の2つの表は、ユニークユーザーとアプリ利用時間のそれぞれについて、前年比増加率上位10位までのサービスとそのカテゴリーを増加率順に並べたものです。今回の記事では以下の2つのカテゴリーについてみていきます。

学校教育におけるEdTechの活用

  • 授業映像プラットフォーム:ライブ授業やビデオ教材シェアのためのプラットフォーム
  • クラス運営プラットフォーム

授業映像プラットフォーム

オンライン授業プラットフォームである腾讯课堂、中国大学MOOC、学习通もユニークユーザー増加率TOP10にランクインしました。これらの企業は自社で授業コンテンツを作成しているわけではなく、MOOCのようなビデオ教材や資料をシェアできるプラットフォームを提供しているものと、主に大学などがオンライン授業を行うための、ZoomやSkypeのようなビデオチャット機能を持ったプラットフォームを提供しているものがあります。

ビデオ教材や資料をシェアできるプラットフォーム

アプリ利用時間において最も増加率(793.3%増)の高かったCCTalkは主に塾などの講師がオンラインで授業を掲載する用途で利用されています。

学习通も同様にビデオ教材や資料をシェアできるプラットフォームです。課題の配布・提出機能も搭載されています。主に大学の授業で利用されており、オンライン授業でよく課される小テストやレスポンスシートの配布・回収もアプリ上で実行可能です。

中国大学MOOCは、中国の高等教育機関がビデオ教材や資料をアップできるプラットフォームです。中国大学MOOC上の授業は全て高等教育機関の教員がアップしているもので、あらゆる人が無料で学習をするために作られました。


出典:中国大学MOOCより。中国大学MOOCの授業画面。

新型コロナウイルスの発生以前から利用されていましたが、授業の公開設定が可能(一般公開するか、授業コードを持っている人のみがアクセスできる限定公開にするかを選べる)であり、少数の教員が授業履修者限定で教材を提供しているのみにとどまっていました。

新型コロナ発生以降は、動画配信型のオンライン授業をする際に多くの大学で広く活用されるようになり、ユーザーが急増しました。なお、大学の授業に中国大学MOOCが利用される際、WeChatミニプログラム(WeChat上で起動するアプリのような機能)で、出欠(授業映像を見終わったら出席の申告をする)をとったり、課題を配布・提出したりできます。


中国大学MOOCのWeChatミニプログラム場で授業後の小テストを行なっている画面


中国大学MOOCのWeChatミニプログラムを使って出席を入れる画面

ライブ配信機能を持ったプラットフォーム

腾讯课堂(Tencent Classroom)はライブ授業を行うためのプラットフォームであり、大学のオンライン授業で利用されているようです。日本の大学で主に使われているZOOMに近い機能を有しています。また、腾讯课堂は、CCTalkのようなビデオ授業プラットフォームでもあり、様々な授業が公開されています。

上記ランキングには含まれていませんが、サウンドネットアゴラ(声网Agora)という企業も注目に値します。この企業は、教育分野に限らず、ライブ配信機能等の備わったプラットフォームであるSD-RTN(Software Defined Real-time Network)を提供しています。以下の図はライブ授業配信サービスの仕組みを表しています。


出展:教育解决方案

3月11日に、サウンドネットアゴラ(声网Agora)は、感染症流行期間中、ユーザーの1日平均通話時間が15億6000万分と2倍近くに増加したと発表しました。その中でも教育業界では、リアルタイム音声・ビデオ通話の利用時間が7倍に増加しています。塾大手の好未来もサウンドネットアゴラのプラットフォームを利用してオンライン授業を提供しています。

参考
声网Agoraは感染症流行により、教育業界のリアルタイム音声・動画通話の利用時間が7倍に

これは、「元々はEdTech利用に特化したものではなかったものの、オンライン講義のためのプラットフォームとしての利用が進んでいるサービス」の一例であり、同様のサービスにビデオおよびテキストチャットサービスのDingTalk(アリババ系)やTencent Meeting(テンセント系)が挙げられます。

特に学校教育のオンライン授業ツールに関して、アリババとテンセントの競争は熾烈です。アリババ系のDingTalkは、1月27日に中国国家教育部が「2020年春学期の授業開始の延期に関する通知」を発表すると、すぐにオンライン教室の機能を全国の学校に無料開放しました。それによってDingTalkは急拡大し、2月のApp Store無料アプリダウンロード数で1位となりました。

テンセントは、遅れながらもオンライン授業ツールを無料開放し、追い上げを狙っています。2月には、ユーザー数8億人超えのQQアプリ上に、QQグループ教室という機能を追加しました。これにより、チャットルーム上でライブ配信、挙手、発言、設置管理者サポートなどの基本機能に加え、板書のオンライン共有、宿題の提出確認や添削、評価などツールが使えるようになりました。中国ではクラス・授業ごとにQQかWeChatのチャットグループが組まれていることが多く、QQグループ教室への集客が期待できます。

クラス運営プラットフォーム

ユニークユーザーの増加率が3番目に高かった家校帮(前年比195.8%増)は、名前の通り家庭(家)と学校(校)を繋ぐ(幇は助けるの意味)役割を果たすサービス(中国では「家校間連絡サービス」とも呼ばれる)です。このように、主に小中高校のクラス運営のための機能を備えたプラットフォームを、ここでは「クラス運営プラットフォーム」と呼びます。その主な機能は以下の3つです。

・課題の配信
・出欠、課題等の管理
・先生と生徒、保護者間の連絡

家校帮は、授業で扱う教材、授業内での学習状況(先生の質問に対する回答など)、宿題の進捗やその内容など、子供の学習状況がかなり詳細に保護者にシェアされます。また、メッセージ機能など保護者と先生とのコミュニケーションを助ける機能もあり、比較的低学年の生徒の教育に適した機能が揃っています。また、休校期間中に遠隔で宿題を出したり、学習管理をしたりする用途でも利用できます。

アプリ利用時間増加率で上位に入った天天乐学学乐云教学も同様に授業管理のサービスです。これらのサービスは上にあげた機能に加え、オンライン授業のためのビデオ通話機能も搭載されています。休校中の学校での利用増加を背景に、これら多くの授業管理プラットフォームサービスが成長しています。


出典:天天乐学アプリでライブ授業をしている様子。天天乐学ホームページより

以上のサービスは企業が提供するものですが、他にも政府によって運営されているサービスもあります。上海市教育委員会は空中課堂というサービスを発足させ、平日は毎日各学年向けの授業をテレビで放送しています。これは、ネット上で見ることもできます。


出典:上海空中課堂の高校二年生の時間割。哔哩哔哩より

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