




コロナを経験したEdTechトレンド展望 前編 - 中国EdTech#31
2020.04.24
はじめに
今回から、大学におけるコロナの影響とEdTechビジネスにおけるコロナの影響を、前編・中編・後編に分けて順番に解説していきます。今回は前編です。
今回扱うトピック
- コロナ下の学校教育はどう変わったか?
- コロナウイルス蔓延の影響でオンライン教育が急加速
- EdTechのどんなカテゴリーが伸びているのか?
- オンライン講義:オンラインで自社の授業を提供している塾
- 学習ツール:宿題の補助など
- 授業映像プラットフォーム:ライブ授業やビデオ教材シェアのためのプラットフォーム
- クラス運営プラットフォーム
- EdTech利活用が進んだ地域特性
- コロナを経ての中国EdTechの展望
- 中長期的な展望
- EdTech業界の構図はどうなるのか
前編では「学習ツール」までを解説します。
コロナ下の学校教育はどう変わったか?
新型コロナウイルス感染拡大の中で、中国では2月に全国的な学校閉鎖の措置がとられました。まず小中高校では、後ほど紹介する授業管理サービスやオンライン授業プラットフォームを使って、先生が生徒にオンラインで宿題を課したり、ライブ授業を行ったりしています。中でも2020年2月に中国iOS APP STOREでアプリダウンロード数が1位となった钉钉というアプリは、ライブ授業や課題配信だけでなく生徒の学習状況管理などの様々な機能が搭載されており、授業をオンラインで実施するのに必要な機能が揃っています。
大学でもオンライン化の措置がとられています。中国の大学ではそれぞれ、ほぼ全授業でQQまたはWeChatのグループが作成され、それをもとにして教育が行われているそうです。授業は基本的に2パターンのやり方があり、これらのチャットグループで画面共有しながらビデオ通話で行われるか、他のツールでライブ配信をするのが主流です。オンライン授業のツールとして使われているものには、腾讯课堂、中国MOOC、知到などがあります。
次に、中国のEdTechビジネスがコロナウイルスによって受けた影響を見ていきます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンライン教育が急加速
様々なEdTech企業が無料でオンラインサービスを解放するなどのキャンペーンを実施したことで、利用者は急速に拡大しています。まずは業界の成長をマクロ的にみてみましょう。
以下の図は、モバイルアプリの主要7分野について2020年2月のMAU(月間アクティブユーザー数)と前年同月から増加した割合を表したものです。増加率はオンライン教育(EdTech)が群を抜いて高く、83.7%増となりました。
出展:Trustdata大数据监测平台
EdTechのどんなカテゴリーが伸びているのか?
出展:艾瑞产业研究洞察を参考に筆者が作成
上の2つの表は、ユニークユーザー数とアプリ利用時間のそれぞれについて、前年比増加率上位10位までのサービスとそのカテゴリーを増加率順に並べたものです。ここから、最も伸びているEdTedh企業のカテゴリーは大まかに以下の4つであり、それらの増加は2つの異なる要因によってもたらされてことがわかります。
民間EdTechへのユーザー流入
- オンライン講義:オンラインで自社の授業を提供している塾
- 学習ツール:宿題の補助など
学校教育におけるEdTechの活用
授業管理および保護者・学校間の連絡
授業映像プラットフォーム:ライブ授業やビデオ教材シェアのためのプラットフォーム
- 授業管理および保護者・学校間の連絡
- 授業映像プラットフォーム:ライブ授業やビデオ教材シェアのためのプラットフォーム
以下では各カテゴリーをみていきます。
オンライン講義
ユニークユーザーの増加率が最も高かった学而思网校と猿辅导は、それぞれ314.5%、209.2%増と圧倒的な増加を記録しました。これらは自社で作った授業を提供するオンライン講座企業として分類できます。一方で、両者の1ユーザ1日あたりの利用時間はユーザー増加率よりも低く、サービス利用時間はそこまで長くないユーザーが増えていることがわかります。
オンライン講義を提供するサービスが伸びている原因の一つは、教室の閉鎖です。オンライン講義を提供する企業は、防疫期間中にオフラインの教室が稼働できなくなったため、多くの企業がオンラインにシフトしました。また、オンライン講義を無料公開したところも多く、その影響で大量に新規ユーザーを獲得しています。
これらの事象が、オンライン教育の飛躍的拡大に効果を及ぼし、それまでEdTech企業が莫大な費用を費やしてきた宣伝費の節約にもつながりました。中国2大塾の新東方傘下のオンライン教育サービス「東方優播」のCEO 朱宇氏によると、「業界全体で1000億元(約1兆6000億円)近い宣伝費を節約できたと思う」とのことです。
参考:「新型コロナでオンライン教育業界の再編が進む」、教育大手の新東方に取材
学習ツール
猿题库、盒子学生、作业帮、哈哈文库など、ユーザー数、利用時間の両方で上位に多くランクインした学習ツールというカテゴリーのサービスは、主に宿題を補助するものです。この中でもシェアの大きい作业帮は、宿題管理と宿題の解答検索サービスを提供しています。
主にK12の子どもの自宅学習時間が長くなったこと、宿題が増えたことによって、これらのサービスの利用が増えているのでしょう。
学校教育におけるEdTechの活用事例に関しては、後編で解説します。
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