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中国素質教育EdTechまとめ 後編 - 中国EdTech#25

第23回の中国素質教育EdTechまとめ前編では、そもそも素質教育とは何か、そして中国における素質教育EdTechビジネスの動向について概観しました。それに続いて、素養教育の各分野の動向について中編・後編と2回に分けて紹介していきます。今回の後編で紹介するのは以下の分野です。

  • 芸術:絵画、音楽、ダンス等
  • 一般教養:口才教育、国語(中国語)、スピーチ、論理思考、数学等
  • 幼児教育

芸術

子ども向けの芸術教育業界の市場において、大きな割合を占めるのが音楽、美術、ダンスの分野で、合計で市場の80%以上を占めています。その中でも最大なのは音楽で、美術がそれに続きます。この順位は、教育コンテンツのオンライン化の速度に対応しています。芸術分野のうち、音楽は先行してオンライン化が進み、美術もそれに続きました。しかしそれらと対照的にダンスはオンライン教育化がほとんど進んでいません。スポーツ全般に共通することですが、運動の必要性などから、生徒が家で受講するのは難しいというのがダンスのオンライン化が遅れた要因だと考えられます。

音楽

中国のオンライン音楽教育において代表的なサービスの一つに、上海妙克信息科技社の「VIP陪練」があります。VIP陪練は、アプリを用いてオンラインでピアノなどの楽器のマンツーマンレッスンをするサービスで、リリース以来毎年1000%というユーザー増加率で爆発的なスピードで拡大しています。2018年11月に、Tencentなどから1.5億米ドル(約164億円)の大型資金調達(シリーズC)を実行し、調達後の評価額は6億米ドルになりました。これは中国素質教育業界の資金調達の歴史の中でも最大規模となっています。これに並んで、子ども向け英語教育企業のVIPKidも2019年に1.5億米ドルの資金調達に成功しています。


参考:36氪独家| VIP陪练获1.5亿美元C轮融资,音乐教育炙手可热?_详细解读_最新资讯_热点事件

“VIP陪練のサービスに関する詳細は第19回で解説しているので、興味のある方はご覧ください。
年1000%成長のオンラインピアノレッスンアプリ“VIP陪練”大解剖ー前編|中国EdTech#19

オンライン音楽教育の最大の特徴は、その圧倒的な価格の低さにあります。例えば、従来のオフラインのピアノレッスンだと200-300元(約3110-4670円)が相場ですが、VIP陪練の授業料は1コマ(1時間)につき56-70元(約870-1090円)です。このように、音楽教育はオンライン化により授業の運営コストがカットされ、従来のオフライン授業に比べ大幅に価格を下げることに成功しました。これまで高価な音楽教育に手が出しづらかった、農村や中小規模の地方都市に住む層の家庭にも、低価格化した音楽教育が広まっていくことが予想されます。

美術

子ども向け美術教育にも、オンライン教育が徐々に登場してきています。代表的な企業の一つに画啦啦があります。

画啦啦
画啦啦は2018年後半から、教師・生徒・授業時間を固定し、教師1対生徒6の少人数のライブストリーミング授業のスタイルを確立しました。それによって、授業の満席率は98%に達し、生徒の授業継続率は75%と高い水準になりました。
参考:36氪首发 | 在线少儿美术品牌「画啦啦」完成数千万美元B轮融资,经纬中国、启明创投领投

一般教養

一般教養分野には、話す力をのばすための口才教育、論理思考、中国古典、数学などがあります。このうちの多くは、母語の言語能力および論理的思考力を培うもので、生きる上で重要な基礎能力として重視する保護者が増えつつあります。

口才教育

一般教養教育の中でも、口才教育という分野が比較的大きな市場を形成しています。包括的に話す力に関する能力を向上するための教育で、スピーチや面接、人間関係などについて教えるものです。智研咨询整理によると、中国の口才教育の市場は2011年から毎年成長を継続し、2017年にその規模は規模は282.2億元に達しました。成長は今後も続く見込みで、2024年までに878.8億元に到達すると予想されています。

出典:https://www.chyxx.com/industry/201901/710423.html


出典:https://www.chyxx.com/industry/201901/710423.html

趣口才
趣口才は、子ども向けにスピーチや言語ロジックなどの口才教育を、オンライン授業で提供する企業です。同社は、2017年に創業された若い企業ですが、急激に成長し、在籍教師数は160以上、月間売り上げは約300万元となっています。客単価は8000元(約12.6万円)と比較的高く、(少なくともこのサービスを利用している)中国の保護者たちは口才教育に対して熱心であることがわかります。

幼児教育

Neobear
幼児教育企業の一つに、AR幼児教育企業のNeobearがあります。同社はAR技術を用いた幼児教育サービスを提供しており、代表的な製品として「口袋动物园(ポケット動物園)」があります。この製品は、動物の絵と漢字、ピンイン(日本語の読み仮名に相当する)がかかれたカードおよびアプリから構成されています。子どもは、この製品を通して、ARを用いて3D化したリアルな動物を観察できます。こちらがデモ動画です。

また、同社は漢字教育の教材(漢字カードおよびアプリ)も販売しています。こちらの教材は、漢字カードをタブレットに読み込ませるクイズなどを通じ、ゲーム感覚で漢字の読み書きや発音を学べるようになっています。この教材のデモ動画はこちらです。

これらの製品は、直感的かつ楽しく学べるように設計されており、特に幼児に適した内容となっています。幼児教育において重要なのは、提供するコンテンツが幼児にとって楽しいものであるか、ゲーム性があるか、直感的で学習が容易であるかなどでしょう。以下の図からわかるように、教育のオンライン化は高い年齢層から進んでいます。幼児向けの教育のオンライン化が進展するための鍵は、以上に挙げたような幼児にも取り組みやすいコンテンツをオンラインで提供できるかどうかという点でしょう。


参考:艾瑞咨询より

終わりに

素質教育の中でも市場規模の大きい、子ども向けの英語教育、プログラミング、そして音楽教育は次々とオンライン化していき、比較的成熟した市場である子ども向けの英語教育の分野ではVIPKidなどユニコーンも誕生しました。一方で、スポーツやフィールドワークなどの分野は現実的にオンライン化はかなり難しいと思われます。結果として、素質教育全体ではオンライン化率は5%以下と、かなり低い水準となっています。

出典:北塔资本のスライドより

上の図によると、子ども向け英語教育が最初にオンライン化し始め、それに遅れて、それ以外の分野がオンライン化し始めています。今後、中国素質教育業界全体のオンライン化の動向において、まだまだオンライン化が始まってから日が浅い、音楽をはじめとした芸術教育や、プログラミング教育等の科学技術教育が重要な役割を果たすでしょう。また、日本でもレアジョブなどのオンライン英会話が比較的普及していることから中国と同様に、今後オンラインの音楽教育やプログラミング教育が拡大していくと思われます。

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