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中国素質教育EdTechまとめ 前編 - 中国EdTech#23

はじめに

現在、中国教育産業の中でも素質教育という分野が注目されています。素質教育とは、アート・プログラミング・語学などの分野の教育を指します。これから前・中・後編の3回に分けて素養教育に関連するEdTechを概観していきますが、今回は前編として、そもそも素質教育とは何か、そして中国における素質教育EdTechビジネスの動向について概観します。

今回扱うトピック

  • 素質教育とは?
  • 素養教育重視の背景ー受験教育一辺倒からの政策転換
  • 素質教育ビジネスの概況
  • 今後オンライン化が注目される分野
  • 終わりに

素質教育とは?

素質教育とは、子どものさまざまな素質や人間性を育てようとする教育を指し、受験教育以外の教育全般を指す言葉としてよく使われます。「応試教育(受験教育)」と対比的に語られることもあります。

中国のEdTech全体の中で見ると、素質教育は以下の図のような位置付けになります。

中国のEdTechは大きく7つの分野に大別でき、素質教育はそのうちの1つです。

  • 学校向け情報技術サービス
  • 早期幼児教育
  • K12教育
  • 高等教育
  • 職業訓練
  • 語学学習
  • 素質教育

素質教育重視の背景ー受験教育一辺倒からの政策転換

素養教育という分野が形成されてきた背景には、中国政府による政策の転換があります。近年の教育政策の変遷を見てみましょう。中国では、日本をも凌ぐと言われる学歴社会が形成されており、大学受験をはじめとした各種受験が就職や社会階層に重大な影響を及ぼすと言われています。そのため、戦争とも形容されるような受験競争がどんどん激しくなっていきました。やがてこれが社会問題化し、1990年代に中国の教育界や教育関係者の間に学校教育の果たす役割を見直すべきという考えが広まりました。中国政府発表の「中国教育改革と発展綱要(1993年2月13日)」では、「思想・道徳や文化・科学、労働技能および身体・心理の素質」を高める必要性が強調されました。続いて2000年代に入ると、「基礎教育課程改革要綱(試行)(2001年6月)」、「新教育課程標準(新しい学習指導要領)(2005年9月)」が相次いで発表され、受験での合格を目指す「応試教育(受験教育)」から、子どものさまざまな素質や人間性を育てようとする「素質教育」へと、政府はカリキュラムを転換しました。このようにして、中国では素質教育を重視する価値観が徐々に広まっています。

参考1:中国の「素質教育」についての検討
参考2:1.「応試教育」から「素質教育」へ - 北京調査から教えられたこと・樋田大二郎(青山学院大学教授)

素質教育ビジネスの概況

こちらは中国素質教育企業の分類図です。

出典:https://xcx.wuctr.com/wukong_upload/20180803/11/201808030924415390_32222.pdf

素質教育はかなり細分化されており、上図にあるものだけでも、音楽、美術、囲碁将棋、楽器、プログラミング、科学教育、思考訓練、朗読、詩、育児教育など、様々な分野があることがわかります。

今後オンライン化が注目される分野

出典:艾瑞咨询

上図は中国教育産業各分野のオンライン化率を表したものです。素質教育の2018年時点ではオンライン化率は5%以下とされています。産業全体のオンライン化率は10%以下、語学教育のそれが25-35%であることからわかるように、素質教育のオンライン教育化は比較的遅れを取っています。理由としては、素質教育には、アートや科学実験など、オンライン化しづらい分野があることが考えられます。


出典:北塔资本のスライドより

素質教育分野は、コンテンツにあった形式でオンライン化を進めることが必要です。実際、下の図を見ると、子供向け英語教育の後を追う形で、徐々に音楽、芸術、プログラミング、国語、論理思考、科学といったサービスが出始めているのがわかります。


出典:北塔资本のスライドより

上図は教育分野の有力なVCである北塔资本が発表している資料です。オフラインの素養教育サービスをオンライン化する際には特に英語、数学、ピアノ教育の分野についてはアプリやゲームを開発することを勧めています。また、様々な素質教育の分野で「少人数クラスのライブストリーミング授業」の導入が推奨されています。
この「少人数クラスのライブストリーミング授業」は、現在のオンライン教育の中でも特に有力視されているものです。ストリーミングサービスには、60人程度の生徒を一度に相手にするものや、一対一のもの(オンライン家庭教師)も存在しますが、コストと学習効果のバランスからみると、5、6人を一度に指導する、少人数クラス型のストリーミング授業サービスが主流と言えます。オンライン教育の導入において、コンテンツに合わせて、効果的な形式で導入すれば、今後あらゆるオフライン素質教育企業がオンライン化する可能性を持っているでしょう。

素質教育の主要ジャンル

続いて、素養教育の中でもどのジャンルが主要なものであるかを見ていきます。以下のグラフは、2018年の中国素質教育業界の分野別の投資案件数を表しています。これを見る事で、素質教育のどのようなジャンルが注目され、成長しているのかを分析できます。

参考:报告 | 2018年素质教育行业爆发,科创教育成最热赛道

このグラフの横軸に示された各分野を、投資額順に並べ替えると以下のようになります。全体としては、子供向け英語教育の投資規模が群を抜いて大きい(53.7億元)です。海外留学への関心が比較的高い中国において、早期からの質の高い英語教育は、中国の親たちにとっては関心が高い分野であり、市場規模も巨大です。それに続くのが、科学技術や芸術分野ですが、前者はエンジニアの給与が高い事もあり、教育への投資が積極的であることに起因しているのかもしれません。

  • 子供向け英語教育
  • 科学技術:プログラミング、ロボット
  • 芸術:絵画、音楽、ダンス等
  • 一般教養:国語(中国語)、スピーチ、論理思考、数学等
  • 幼児教育
  • スポーツ:球技、水泳、武術
  • フィールドトリップ系:旅行、ビジネス視察、博物館見学

終わりに

次回以降、中編・後編として、これらの分野について、2回に分けて紹介していきます。

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