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GET2019参加レポートNo.3ー新フェーズの中国EdTechを探ります(後半) - 中国EdTech #16

前回に引き続き、GET2019参加レポート第3回では、GET2019の4つのポイントを、実際カンファレンスのスピーチやプレゼンなどを用いて詳しく解説していきたいと思います。
4つのポイントを押さえると、これからの中国EdTechの動きが把握しやすくなると思います。

今回扱うトピック

  • 前回の復習:GET2019の4つのポイント(前半)
  • ポイント3:大学入試改革とその影響
  • ポイント4:貧困対策としてEdTechにできることは?

前回の復習:GET2019の4つのポイント

「次のステージに入った」中国EdTechポイントは以下の4点です

  1. これまで展開してきたサービスをプラットフォーム化して、他の教育機関や公立学校に提供すること
  2. さらなるAIの活用を進めること。そしてAIの活用方法に関する議論の高まり
  3. 政府の進める高考(大学入試)改革と連動したサービスを開発すること
  4. 政府の反貧困政策のもとの双師授業の展開

今回は3つ目と4つ目について詳しく見ていきます。

ポイント3:大学入試改革とその影響

三つ目のポイントが、政府の進める高考(大学入試)改革と連動したサービスの登場・躍進です。

中国の入試改革の現状?

2020年をはじめとして、中国各省で高考(大学入試)の改革が行われます。
(高考は省ごとに運営されているので、高考改革にも省ごとに若干時期がずれています。)
日本では大学入試改革の英語と国語の改革がたびたびニュースを賑わせていますが、中国でも入試改革の目玉は英語と国語です。

国語に特化した教育サービスって?

国語に関して言えば、もともと中国の大学入試の国語は難易度が高く、諸子百家の作品から現代の作家までかなりの分量を読まされる上、800字以上の作文問題まであります。国語は短期間で成績を伸ばすのが難しい科目だけに、大学入試を見越して小さい頃から子供に国語教育を受けさせようとする親も多くなります。

ちなみに下の図が今年2019年の高考(全国1)の試験で出題された作文問題です。

阅读下面的材料,根据要求写作。
(下の文章を読み、条件に従って作文しなさい。)

  1919年,民族危亡之际,中国青年学生掀起了一场彻底反帝反封建的伟大爱国革命运动。1949年,中国人从此站立起来了!新中国青年投身于祖国建设的新征程。1979年,“科学的春天”生机勃勃,莘莘学子胸怀报国之志,汇入改革开放的时代洪流。2019年,青春中国凯歌前行,新时代青年奋勇接棒,宣誓“强国有我”。2049年,中华民族实现伟大复兴,中国青年接续奋斗……
(1919年、民族滅亡の危機に際し、中国の青年学生は徹底的に反帝国反封建主義の偉大な愛国革命運動を起こした。1949年、中国人はここに立ち上がった!新中国の青年は祖国建設の新たな道のりに身を投じた。1979年、「科学の春」は生気溢れた数多の学生は祖国への志を胸に、改革開放の時代の流れに飛び込んだ。2019年、青春の中国は凱歌を歌って前進し、新時代の青年は勇しくバトンをつなげ、「強国に我あり」と宣誓する。2049年、中華民族は偉大な復興を実現し、中国の青年の戦いは続く…)

请从下列任务中任选一个,以青年学生当事人的身份完成写作。
(下の任務の中から一つ選んで、青年学生自身になり切って作文しなさい。字数は800字以上。)
  ① 1919年5月4日,在学生集会上的演讲稿。(1919年5月4日の学生集会の演説原稿)
  ② 1949年10月1日,参加开国大典庆祝游行后写给家人的信。(1949年10月1日の開国大典祝賀旅行に参加した後、家族に送る手紙)
  ③ 1979年9月15日,参加新生开学典礼后写给同学的信。(1979年9月15日、(文革後初めての)学校の入学式の後に同級生に贈る手紙)
  ④ 2019年4月30日,收看“纪念五四运动100周年大会”后的观后感。(2019年4月30日、五四運動100周年記念大会を観た感想)
  ⑤ 2049年9月30日,写给某位“百年中国功勋人物”的国庆节慰问信。(2049年9月30日、国慶節に「中国百周年貢献者」何名かに送る見舞い手紙)

出典:http://edu.sina.com.cn/gaokao/2019-06-07/doc-ihvhiqay4116638.shtml?sina-fr=bd.ala.edu.gk.zw

こうした動きに連動して、会場で目立ったのが国語教育サービスでした。こうした高考に連動した、素質教育型の国語教育サービスは「大語言」呼ばれます。
特に目立ったものではありませんでしたが、北京を拠点に置く大手塾立思辰が2019年9月に改めてリリースした豆神大语言や、2010年から国語教育サービスを展開している悟语学堂がクローズアップされているのが印象的でした。

両者とも、未就学児〜中学生までを対象に、塾での授業とストリーミング授業を組み合わせた国語専門のサービスです。
主に読解力・語彙力・作文能力の強化を目指しています。

ちなみに、日本でもセンター試験の記述式導入をめぐって、盛んに議論されていますが、
中国の場合は、主に高校の教師が採点官を務め、一つの答案に二人が採点し、原則その平均値が得点となるようです。

スピーキング自動採点システムの導入も進む

英語に関する重要な改革は、スピーキング試験の導入とリスニング+スピーキングの配点率の増加です。
すでにいくつかの地域ではスピーキング試験の導入が試験的に進んでいるらしいのですが、2020年度以降、全国各地に徐々に広がっていく見通しです。
(なお、高考の運営・テスト問題の作成・採点は、国ではなく省単位で行われており、省によって導入スピードが異なります。)

例えば、政府系メディアの环球网によれば、2021年に始まる北京市の高考新制度では、スピーキング+リスニングが50/150点と英語試験の3分の1を占めるようになるそうです。

こうした試験改革を背景に、採点の効率化のため、スピーキングの自動採点システムの開発も進んでいます。

また、高考でのスピーキング重視に伴って、スピーキング学習用のサービスも登場していました。
カンファレンス会場で見た中で驚いたのが、Huaweiの発音チェックシステムです。マイクとカメラを使って、生徒の発音と口の動きを認識します。二つのデータを照合して、どのくらい発音が合っているのかを確かめられるサービスです。

このシステムの使い道は、もちろん発音矯正に止まらず、実際に担当者が言うところでは、地方の試験採点システムに導入されているようです。
試験会場では、数万人の学生が同時に試験を受けるため、マイクで正確に音を拾えない可能性も出てきてしまいます。
そこでこのようにマイクとカメラを組み合わせることで、より正確な音声データの取得を行うことができるようです。

下の写真は実際に筆者が試しに使用してみたものです。私が自由に発した英語も、システムの方で自動で単語に切り分けて、各音節ごとに発音の採点を行ってくれます。



また入試改革全体は、応試教育(従来のテスト対策としての勉強)から素質教育(人格を育てる教育でSTEAM教育・思想・道徳など)への移行を目指すという目的のもと進められています。

高考改革と連動する形で、2019年には国務院から《关于新时代推进普通高中育人方式改革的指导意见(新時代の普通科高校教育方式改革の指導に関する意見)》が提出され、従来の詰め込み式の授業からクラス内での議論や、生徒個人の興味を伸ばすような高校教育へと改革が進もうとしているなど、学校の内外での素質教育の流れにも注目したいところです。

ポイント4:貧困対策としてEdTechにできることは?

四つ目の注目したのは、農村地域と都市の教育格差の問題が多く取り上げられていたことです。
政府の反貧困政策の影響もあるのでしょうが、好未来や松鼠AIも自社のサービスが農村部で活用されている様子をプレゼンしていました。

  • 写真は筆者撮影

農村部での双師授業の活用

これまでの記事でも触れてきましたが、双師授業とは、ストリーミングで優秀な教師が授業をし、現地の先生が補助を行うという授業スタイルのことを言います。
中国で双師授業は、外国に住む英語ネイティブ教師による大人数向け授業(日本の学校のALTのストリーミング版)のような使われ方もしますが、それ以外にも、優秀な教師が少ない農村部で、都会と同じ高品質の授業を提供するためにも利用されます。
その活用の場は、民間セクターに止まらず、教育資源の乏しい公立学校に、民間企業が授業パッケージごとサービスを導入するというやり方も見られます。

今回会場で見て、かなり印象に残ったのは、小鱼易连の「肩膀计划」というプロジェクトです。もともとストリーミング技術を開発している小鱼易连ですが、農村の小学校に自社のストリーミング技術を活用して双師授業を提供しているそうです。
またCEOの袁文辉は、2019年には100校への導入を行い、2021年には900校へ拡大したいと語りました。

下の動画は四川省達州の小学校が舞台ですが、中国の農村は、日本のメディアで目にする、北京や上海の生活とは全く異なります。
農村の子供の多くが、都市で出稼ぎをする両親と離れて、祖父母と共に生活しています(留守児童と言います)。
都市部の学校とは違い、クラス担任の先生が基本的に全ての授業を行うので、教師の得意不得意に授業の出来も左右されてしまうでしょう。

出典:腾讯视频

いかがだったでしょうか。
次回は、GET2019に登壇していた、EdTechの注目VCの動向を探りつつ、面白いスタートアップを発掘していきます。

参考

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