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中国EdTechの今までとこれからーEdTechの成り立ちと最新トレンド - 中国EdTech#12

第12回の今回は、5つのユニコーン企業を擁する中国edtechがどのように発展してきたか、中国EdTechの歴史を解説していきたいと思います。 まず90年代に中国の教育産業がどのように始まったのか、そして2010年前後を起点としたスタートアップブームについて簡単に説明します。政府の政策とテクノロジーの発展がスタートアップシステムと教育産業にどのような影響を与えてきたのかが分かるはずです。 それから、少しミクロなトレンドに目を向けて、中国EdTechにおけるサービストレンドを振り返ります。

今回あつかうトピック

  • 中国教育産業のはじまり
  • 10年代のスタートアップブームとその背景
  • EdTechsのサービストレンドの推移
  • 今後の中国EdTech市場

中国教育産業のはじまり

2010年代のスタートアップブームの前に、以前紹介した好未来や新東方などの大企業が生まれた背景を紹介します。 下の図は、1990年以降の中国教育産業のトレンドの変遷をまとめたものです。

1970年代後半に文化大革命を終結さえた中国は、その後鄧小平の指導のもと、社会主義市場経済に舵を切ります。それまで禁止されていた私営企業が解禁され、また欧米や日本に倣って様々な産業の育成が行われるようになります。
こうした中で、政府が留学を推進する中で、留学指導を行う企業が出始めます。中国最初の教育産業ブームです。 例えば1993年には、留学対策用の英語塾として新東方が創業されました。その創業ストーリーは2013年に映画化されたほどです。(『中国合伙人』)(第6回の記事)[]でも紹介した通り、今ではK12から成人教育まで幅広い分野を手がける、中国教育界のトップ企業となっています。

同時期、1990年代の中国教育産業のもう一つの人気分野となったのが成人教育です。第2回の記事でも紹介しましたが、中国EdTechの特徴の一つとして、成人・大学生向けの職業教育や語学学習サービスから先に発展してきたという点が挙げられます。

その背景としては、市場経済の進展に伴って、個々人がスキルや資格を求め、就職市場での差別化を図ろうとしたことが考えられそうです。 また企業側としては社会人の購買力に目をつけたこと、学校での拘束時間が長く、生徒が学校外の商品を利用することが難しいためなどが挙げられます。

2000年代に入ると、新しくインターネットが広がります。例えば騰訊の創業が1998年、アリババが1999年、百度が2000年です。 こうしたインターネットを活用した、中国で初めてのオンライン学習サービスが、1996年創業の弘成101网校(現在の弘成教育)です。当時のサービスは、テスト問題や講義ノートを提供するものでした。 また第4回の記事の記事で触れた、オンラインの語学学習サービス沪江の創業は2001です。最初は成人向けサービスとしてリリースされました。
もう一つの同時期のトレンドとしては、K12分野サービスが挙げられます。学而思(現在の好未来→第5回の記事)も最初は補習塾としてその事業をはじめました。 家庭収入が徐々に増加する中で、厳しい受験戦争がこうしたサービスの展開を支えました。

徐々にインターネットを利用したサービスが出てきますが、当時のインターネットはまだ教育サービスに使うには未熟で、あまり学習効果が高くありませんでした。 次の項では、主にスマートフォン登場以後を扱っていきますが、その前に、2010年代の活発なスタートアップ創業の背景を探ります。

10年代のスタートアップブームとその背景

市場経済に移行してから、中国政府は徐々に起業に関する規制を緩和してきました。例えばVC設立規制の緩和は90年代以降徐々に行われてきましたし、例えば、新興企業への投資を活性させるために2009年には新興株式市場(日本でいうジャスダック)を開設しました。

こうした流れの中で、さらに10年代のスタートアップブームを後押しした要因が3つ考えられます。

一つはもちろんテクノロジーの発達です。2008年にiPhoneが発売され、スマートフォンを中心としたサービスが広がります。中国の有名企業で言えば、出前サービスのeleme、meituanの創業がそれぞれ2008年と2010年、配車サービスのDiDiが2012年、シェアサイクルのofoが2014年です。また騰訊のWeChatサービス開始が2011年、WeChat Payが2013年です。こうしたモバイル決済サービスが一つのインフラになり、その後の起業コストを大きく削減したことも見逃せません。

2つ目がリーマンショック以降の経済政策としての中国政府のイノベーション政策です。2014年には李克强首相が「大衆創業、万衆創新」政策(通称、双創政策。直訳すると「みんなで起業、みんなでイノベーション」)を打ち立て、起業の阻害要因となるような制度の是正や減税、起業のための拠点づくりなどの政策などを展開します。 例えば、VCの設立規制が大幅に緩和され、多くのVCが生まれました。下の図を見て明らかなように、2014年以降VC投資が急増していることがわかります。元建てというのは、中国国内を主に拠点とし、人民元で投資を行うVCのことです。逆に言えば、それまで中国のVC投資の中心を担っていたのは外貨(USドル)で投資を行う国外のVCだったということです。

また「双創」政策のもと、深圳発のメイカーズスペース(衆創空間)が全国に広がるのもこの時期です。

3つ目はスタートアップ投資が魅力的な投資先となったことです。 2014年にアリババがNY証券取引所上場に時価総額2兆円を超える世界史上最高額のIPOを達成したことを契機に、スタートアップが「金のなる木」として注目されるようになります。 リーマンショックを乗り切って急速な成長を続ける中国という市場環境がその背景にあったことは明らかです。

他にも、スタートアップの創業の背景には、「海亀族」と呼ばれる海外留学帰国組が国外の技術やノウハウを提供したことなども考えられます。
次の項では、そうしたスタートアップブームの中で、中国のEdTechサービスがどのような変遷をたどってきたか簡単にまとめたいと思います。

EdTechsのサービストレンドの推移

ここでは、中国のEdTechサービスのトレンドを、主にテクノロジーの変遷を絡めてまとめていきます。 下の図は、第3回第4回の記事で触れた、K12・語学学習分野のサービスを、創業年順にマッピングしたものです。 なお区別しやすいよう、K12サービスは青線で、語学学習サービスは黄線でロゴを囲っています。

この図からわかるのは、おおよそ年代順にサービス形態のトレンドが存在することです。 EdTech黎明期の2010年前後のサービス形態は、主に講義動画の録画を視聴する形のものでした。例えば大手塾の新東方の新東方在线や好未来の学而思网校が挙げられます。この講義動画系の最終形態が騰訊課堂や淘宝教育のような学習動画プラットフォームです。ここでは、様々な事業者や個人が各々自分の授業動画などを販売することができます。一方でこうした録画型の授業動画配信サービスは、学校や塾での授業に比べて生徒とのコミュニケーションが少ないことや、カリキュラムを組み立てづらく、学習効果が少ないなどのデメリットがあります。そのため、現在では新東方在线や学而思网校は、オンライン家庭教師サービスやストリーミング講義サービスを展開しています。

また同じく黎明期に出てきたサービスがツール系のサービスです。宿題の答えを検索するアプリ(小猿索题や阿凡题,学霸君など)や、一問一答形式の問題アプリが主流でした。初期のスマートフォン向けアプリですが、ここに掲載したほとんどの企業がオンライン講義やオンライン家庭教師アプリを展開するようになっています。例えば小猿索题・猿题库→猿辅导、作业帮→作业帮一课、阿凡题→阿凡题1对1などです。簡単なアプリからユーザーを囲い込んでいく戦略が見えます。

またスマートフォンの拡大とともに、スマホやタブレットを使った動画教材アプリも増えていきます。動画教材アプリは、アニメーションなどを使ったものが多く、全体的に小学生・幼児向けなのですが、近年はよりユーザーの低年齢化が進んでいることが予想されます。もともと新東方の酷学多纳や、数学アプリの洋葱数学は小学生向けだったのですが、2016年にリリースされた宝贝英语说(babyabc)や2018年のdadababyなどの対象は0歳児からとなっています。

2013、14年あたりからトレンドになっているのがオンライン家庭教師サービスとオンライン講義サービス(ストリーミング講義)です。ネット回線が早くなったこともあり、家庭でもストリーミングが行えるようになったことで、これらのサービスが登場しました。こうした技術のおかげで、塾よりも安く、ハイレベルな授業を受けられるようになり、また近年では表情認識やAIによる学習進度の把握など、より効率化した授業方法が模索されています。
またここ数年でトレンドになっているのが、双師授業と呼ばれるサービス形式です。具体的にはオンラインで有名講師や外国人の授業を配信しつつ、オフラインで補助の先生が解説や宿題の添削を行うというものです。 K12、語学学習ともに多くのサービスが出てきていますが、特に都市と地方の教育格差を解決する手段としても注目されています。

今後の中国EdTech市場

今まで90年代の教育産業の興りから最新のEdTechトレンドまでをまとめてきました。
2000年代のインターネット産業の勃興から現在のEdTechトレンドを大まかに図示すると、下のようになると思います。

最後にまとめてみると、現在までの中国のEdTechの急増は、やはり2010年以来のスタートアップブームの一環であることがわかります。 一方で、2019年に入ってから中国のVC投資が減速していることも指摘されています。ブルームバーグの記事によると2019年の第二四半期の投資額は2018年に比べて77%も減り、総額94億ドル(2018年は413億ドル)、総取引数は692件と2018年の同時期から半減近く下がっています。 米中貿易戦争の影響も考えられますが、スマートフォンメーカーのXiaomiや出前サービスのMeituanなどが上場してから急激に株価を落としたことや、シェアバイクサービスのofoが多額の融資を得ていたにも関わらず倒産したことなど、こうした事例が影響していることも間違い無いでしょう。投資家も今までのように大量の資金を投入するやり方を変えていくかもしれません。

また市場全体で言えば、2014年以降投資が急増していたこともあり、バブル気味だったものが、次第に落ち着いて、質の悪いサービスが淘汰されていくということにもなっていくでしょう。 そうした時に生き残っていくのは、特にEdTechに関して言えば、好未来や新東方のように教育コンテンツの積み重ねのある企業と、松鼠AIやVIPKIDのように、AIや画像認識などの技術を着実に応用し、確実に学習の効率化を行っていく企業だと思います。

参考

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