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BATのEdTech戦略まとめ(2)(百度編) - 中国EdTech #8

2回連続で、インターネット大手の百度・騰訊・アリババ(所謂BAT)のedtechサービスを解説していきます。
第8回では、その中でも最もedtechへの参入が進んでいる百度の事業と戦略を見ていきます。

今回扱うトピック

  • 復習 BATのedtech戦略と動向
  • 百度のedtech戦略

復習 BATのedtech戦略と動向

前回も触れたように、中国のインターネット産業の根幹にいるのが百度(検索エンジン)・騰訊(SNSと決済)・アリババ(eコマースと決済など)の三社です。
特に、この中でedtechへの参入が進んでいるのが、今回紹介する百度です。

3社のサービスの特徴は、「プラットフォームを生かしたコンテンツの創出」と「学校との提携」です。
例えば百度は、既存のプラットフォームで集めた大量の情報を、学習者と教師が利用しやすい形にまとめることで、コンテンツの創出に取り組んでいます。具体的には元々ユーザーの情報共有サービスとして始まった百度文庫・百度優課などと、検索サービスを融合させ、総合的な学校教育サポートサービスである百度智慧課堂を開始しました。
また上記の例を見てもわかるように、BATのedtechサービスは学校との連携が中心になっています。政府からの信頼が強い、と言う強みもあり、他の企業が参入しにくい学校へのサービス導入を進めています。

百度のedtech戦略

百度は2000年に創業された世界第2位の検索エンジン大手です。中国のインターネット大手のうち、edtechサービスへの参入が最も進んでいるのが百度です。

百度の主要なサービスとしては、検索エンジンだけでなく、百度翻訳(≒ google翻訳)、百度百科(≒Wikipedia)、百度学術(≒google scholar )などを展開しており、また、AI(百度大脑)、ビッグデータ、クラウド技術(百度クラウド)などの開発に力を入れています。
百度はこうした技術の応用と基幹サービスとの連携によって、教育サービスプラットフォームの開発とコンテンツの拡充を行なっています。

百度教育とその特徴

百度教育は、百度の教育サービスプラットフォームです。
百度教育には大きく分けて5つのサービスがありますが、その強みは情報量とその包括性です。特に百度がここ1、2年力を入れている百度智慧课堂は、百度の既存サービスを複合させた、総合的な教育サービスのパッケージとなっており、中国edtechの代表的なサービスが網羅されていると言っても過言ではないでしょう。またそうした大量の情報をもとに開発されたAI技術もその強みと言えます。

一方で、百度教育の弱みはそのコンテンツの質です。インターネットプラットフォーマーが陥りやすい弱点なのですが、ユーザーによる情報の発信と共有をメインにコンテンツを作るため、概して教育内容の質に信頼性が低いと言えるでしょう。またユーザーが作成した教材等を完全に把握できるわけではないため、ナレッジノードなどの活用にも限界があります。
例えば教師向け授業準備&テスト・宿題参照サービスの百度優課は、一見すると全国各地の教師の授業方針などが共有されていてとても便利に見えるのですが、数が多すぎる上、本当に質がいいのか判別しにくい(質が悪いものも混ざっている可能性がある)ため、実際に教師が授業の質・効率を上げられるのかは疑問が残ります。特に小中高それぞれ、省や市ごとに学習要領が異なると言う難しさもあります。
また百度智慧課題堂の教務マネジメントに関して言えば、具体的なサービス内容は利用しないと分かりませんが、SNSアプリや決済サービスを持っている騰訊やアリババの方が有利だと思われます。

百度教育のサービス全体像

以下に百度教育の大まかなサービスの関連図と各サービスの紹介をまとめました。

百度文庫

百度文庫はファイル閲覧・共有サービスです。一般利用者は入試問題、論文、資格試験資料などの閲覧や、共有ができます。企業版サービスもあり、それぞれの企業のファイル管理や紙ファイルのオンライン化などのサービスを提供します。

出典: 百度文庫

百度閲読

百度閲読は電子書籍の販売・閲覧サービスです。

百度閲読

百度優課

教師向け授業準備&テスト・宿題参照サービスです。単元ごとの学習目標、授業プロセス、板書、プリントなどが無料で共有されています。また教授方法などについても、名師(有名教師)によるオンライン講義が無料で受けられるようになっています。さらに、百度文庫と連携し、各学校の中間・期末テストも共有されており、利用者(教師)が参照できるようになっています。

百度優課

百度題庫

高考や資格試験対策用の一問一答サービスと各試験の過去問・模試の共有サービスです。

出典: 百度題庫

百度智慧課堂

百度智慧課堂は百度教育の目玉サービスで、公立学校向けに教育サポートと学校運営サポートを行うサービスパッケージを提供します。2018年から新たに提供されたサービスで、百度文庫、百度優課、百度题庫などの百度の教育サービスを組み合わせたものです。すでに3000校、800万人の教師に利用されているといいます。

百度智慧課堂のサービス

百度智慧課堂のサービスを以下に列挙します。また各サービスの使い方は中国語のみですが、このページにまとまっています。

教育方法

  • 同步備課空間:百度優课の内容をより資料の種類、人気度、単元等でわかりやすくまとめ直したサービスで、教材・単元ごとの学習目標、授業プロセス、板書、プリントなどを共有されています。

出典:同步備課空間

  • 教学空間:有名教師による教授方法などに関するオンライン講義

学習評価システム

  • (未発表)語言空間:OCRを使って生徒の手書きの作文をデータ化し、評価ツールを提供する。

テスト

  • 題庫組巻空間:学年・難易度・形式などからテスト問題を検索・テスト作成を行ってくれるサービス。

成績評価

  • 智能考評空間:オンラインの成績表サービスです。同じく学校アカウントがないと利用できないため詳しくはわかりませんが、おそらくテスト毎に評価が行われ、間違えた問題に応じてやるべき復習などが提示されるなどの学習サポートも行います。教師アカウントと生徒アカウントが分かれており、生徒も好きな時間に成績データを見ることができます。

  • 生涯規划空間:政府の教育計画の中でも、中高考(高校入試と大学入試)の改革に伴い、素質教育・職業教育が重視されるようになっています。そうした潮流をを背景に、学生の特性、科目レベル、大学受験の条件、職業発展の4点から専門の選択を補助するサービスです。

教務マネジメント

  • 智慧教務空間:カリキュラム作成サービスや校務の情報化に止まらず、顔認証システムを利用した出欠管理・生徒の集中力の測定なども行います。

  • 智能安防空間:顔認証システムを利用した学校警備システムです

教師教育

  • 教師成長空間:専門家によるストリーミング授業や、生徒アンケートによる教師評価システムなどにより、教師の授業レベルの向上を目指すサービスです。

公立学校との実験的取り組み

  • AI教育実験室:これは、百度が公立学校にAI教育の学習教材を提供したり専用の学習室を設置したりするプログラムです。どこまで推進されているかは不明ですが、webサイトでは雄安新区(建設中の国家級経済特区)と合肥市の声谷産業園(安徽省の国家級産業基地)にある公立の中高学校にAI教育実験室を設置したことが紹介されています。

出典:AI教育実験室

  • VR教室:公立学校向けのVRを用いた学習教材です。

  • 学習動画PFである百度伝课は2018年から実質的にサービスを停止しています。

百度の技術開発

百度AI開放プラットフォームを中心に技術開発を行っています。

百度のedtech投資

百度のedtech投資は、百度投資と百度風険投資によって行われています(風険はリスクの意味)。既に2019年には数千万元規模のエンジェル投資を、2018年にも数千万元規模の投資を3件行っています。

年別投資件数と分野別投資件数

以下の表に百度が2013年から2019年までに行なった投資案件をまとめました。

百度の投資の特徴

騰訊やアリババと比較すると、百度のedtech投資は多くはありませんが、特徴としては百度風験投資による比較的ラウンドの低い投資が中心です。またK12向け学習ツールと幼児教育(主に数学・プログラミング・英語)が大半を占めています。
また投資数は多くないとは言え、百度のAI戦略全体から考察する必要もありそうです。

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