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BATのEdTech戦略まとめ (1)(騰訊・アリババ編) - 中国EdTech #7

第7、8回は2回連続で、インターネット大手の百度・騰訊・アリババ(通称 BAT)のEdTech事業を解説します。
彼らの基軸となっているサービスとの関連の中でBATのEdTech戦略を見ていきたい思います。
まだ競争が沈静化していない中で、もともと教育系ではない企業もEdTechに進出しています。ここではその中でも特に、中国インターネット大手の3社のBATの動向を解説しつつ、
それでは、第7回ではその中でも騰訊とアリババのEdTech事業について解説します。

今回扱うトピック

  • BATのEdTech戦略と動向
  • 騰訊のEdTech戦略
  • アリババのEdTech戦略

BATのEdTech戦略と動向

BATの基幹サービス

中国のインターネット産業の根幹にいるのが百度・騰訊・アリババの三社です。代表的なサービスでまとめると以下のようになります。

百度がgoogle、騰訊がfacebook、アリババがamazonと考えるとわかりやすいです。
特に、この中で最もEdTechへの参入が進んでいるのが百度です。

BATのEdTechサービスの動向と強み

それぞれ百度・騰訊・アリババでは展開しているサービスの質が異なるのですが、大きな流れとしては、「プラットフォームを生かしたコンテンツの創出」と「学校との提携」が挙げられます。

BATの強みは何よりもその大量のデータですが、一方で教育サービスは、コンテンツが重要です。
そこで百度は、既存のプラットフォームで集めた情報を、学習者と教師が利用しやすい形にまとめることで、コンテンツの創出に取り組んでいます。具体的には元々ユーザーの情報共有サービスとして始まった百度文庫・百度優課などと検索サービスを融合させ、総合的な学校教育サポートサービスである百度智慧課堂を開始しました。

一方で 騰訊とアリババは、学習内容ではなく、決済システムを持つという強みを生かして学校マネジメントシステムに参入しています。
また上記の例を見てもわかるように、BATのEdTechサービスは学校との連携が中心になっています。政府からの信頼が強い、と言う強みもあり、他の企業が参入しにくい学校へのサービス導入を進めています。
またそうしたBATが学校のスマート化に参入する背景としては、国務院教育部が発布した『教育信息化十年発展計画(2011-2020)』(2011)、『教育信息化行動計画2.0』(2018)はもちろんのこと、そうした学校のスマート化がEdTech分野だけでなく、スマート都市開発の文脈でも重要であることが言えるでしょう。(信息化は情報化・スマート化の意味。)

では具体的にそれぞれの企業とその教育サービスを見ていきます。

騰訊のEdTech戦略

騰訊は1998年に創業した、SNSを中心に様々なサービスを展開する中国最大のインターネットプラットフォーマーです。10億人のユーザーを抱え、決済機能を持つWeChat(微信)が代表的ですが、ゲームや動画サービス(騰訊视频)などのエンタメ産業にも盛んに進出しています。Facebook+決済サービスが中心と考えればわかりやすいですが、他にも様々な分野でサービスを提供しています。
百度に比べ、教育産業への進出は比較的進んおらず、学習コンテンツは提供していません。一方で、中国最大のSNS・WeChatのユーザーと決済サービスを生かし、学校マネジメントサービスを展開しています。

騰訊の2つのEdTech事業

以下に騰訊のEdTech事業の大まかなサービスの関連図をまとめました。

騰訊の教育事業は大きく分けて以下の二つあります。

(1) 騰訊課堂

他の記事でも紹介したように、騰訊課堂は学習動画プラットフォームで、発信力のない教育機構や個人と学習者を結ぶ場を提供します。
内容としては、下の画像にも見れるように、プログラミング、デザイン、EC、資格試験、K12補習・受験勉強、外国語、趣味(楽器・カメラ等)など様々なものがあります。

出典: 騰訊課堂

(2) 騰訊智慧校園

騰訊智慧校園は学校・教育機関のマネジメントシステムです。百度智慧課題堂とは異なり、授業支援サービスはありません。主要な機能としては以下の5つが挙げられます。

  • 情報共有:学校からの通知や、学校新聞の配布、成績の確認
  • 授業運営:学事歴や授業変更の通知、出欠確認、宿題配布、クラスのチャットルーム。
  • 学校生活:入学手続き、学費支払いや食堂カードのチャージ。似たようなサービスとして、学校内での支払いにWeChatPayを使用する騰訊微校があります。
  • 通学:生徒の通学状況の把握。生徒が通学路のどこにいるかがわかります。
  • 教務サポート:会議の通知や給料確認


出典:騰訊視頻

実際に、上の画像のように欠席の連絡をしたり、保護者に学校の活動の写真を送ることなどもできます。
また、実際、騰訊は深圳市龍華区教育局と提携し、区内の学校へのサービス導入を行っています。

騰訊の技術開発

騰訊の技術開発の中心は騰訊AI labです。
また画像認識に特化した騰訊優図・AI開放プラットフォームもあります。

BATの中で最多、騰訊のEdTech投資

年別投資件数と分野別投資件数

騰訊のEdTech投資は、騰訊本社と騰訊投資によって行われています。2018年には9件、2017年にも7件の投資を行っています。
以下の表に騰訊が2013年から2019年までに行なった投資案件をまとめました。


騰訊の投資の特徴

百度やアリババと比較すると、騰訊のEdTech投資はかなり多く、また投資ラウンド・分野も多岐にわたっています。
その理由としては、騰訊のサービスは多岐にわたり、はっきりとした主要なサービスがない、と言う点が挙げられます。先ほどはSNSと決済サービスが中心と言いましたが、売り上げの4割はエンタメ・ゲーム分野が占めており、他にも出前サービスの美団点評、配車サービスの滴滴出行などへの投資を通して、サービスの多角化が進みます。
その背景としては、2018年中国“インターネット+”データ経済サミットでCEOの馬化騰の発言にもあるように、WeChat、QQを利用した様々なサービスが繋がる、ビジネスエコシステムを作ろうとする戦略があると言えます。

アリババのEdTech戦略

アリババは1999年に創業した、eコマースサービスの淘宝を中心に展開する企業です。またWeChat Payに並ぶアリペイ(支付宝)も提供しています。簡単に言えば中国のAmazon+決済サービスと言えるでしょう。
現在アリババのEdTech分野の戦略は、騰訊と似通っており、決済サービスを活用した教務マネジメントと、eコマースサービスを応用した学習動画プラットフォームに絞られています。

一方で創業者のジャック・マー(馬雲)は、もともと教師の経歴を持ち、教育に対する思い入れが強いことで有名で、経営者向けの学校なども作ったりしています。そのため、今後のアリババが教育事業に大きく乗り出す可能性も捨てきれません。

アリババの2つのEdTech事業

以下アリババのEdTech事業の連関図をまとめました。

アリババの教育事業は、大きく分けて以下の二つがあります。サービス内容としては、騰訊にかなり似ています。
(1) 淘宝教育
淘宝教育は騰訊課堂と同様の学習動画プラットフォームで、eコマースサービスの淘宝のシステムを利用したサービスです。内容としては、プログラミング、資格試験、外国語、趣味(音楽・ファッション等)、幼児教育などがあります。

(2)釘釘未来校園
釘釘未来校園は、騰訊智慧校園同様、学校のマネジメントサービスを提供しています。具体的な内容としては、顔認証による出欠管理、保護者と教師の連絡、カレンダー管理、書類管理などがあります。

参考までに、釘釘未来校園のPRムービーはこちらです。( →https://tms.dingtalk.com/markets/dingtalk/eduPC?spm=a3140.8736650.757160.2.4c303a1ashZh2q&wh_ttid=pc 添付の動画を参照 )

またアリババも騰訊同様、公立学校との提携を進めようとしており、2019年3月の釘釘未来校園教育発展サミットで、釘釘未来校園CEOの陳航正は将来的に全国の1000箇所の小中高での試験運用を進める方針を明らかにしました。

アリババの技術開発

アリババの技術開発の中心は達磨院です。
機械学習、ビッグデータ、ロボット、金融工学、X実験室(量子化学/人工知能)の5分野を中心に研究を行なっています。

アリババのEdTech関連投資は?

年別投資件数と分野別投資件数

アリババの教育分野への投資は、主にジャック・マーが設立した投資会社、雲鋒基金によって行われています。
表中の2016年以降の投資のうち、宝宝樹以外は雲鋒基金によるもの、2015年以前はアリババによるものです。
以下の表にアリババが2014年から2019年までに行なった投資案件をまとめました。


アリババの投資の特徴

百度やアリババと比較すると、騰訊のEdTech投資の特徴は、投資ラウンドの高さと莫大な投資額と言えます。例えば2018年の宿題管理サービス、作业盒子に対する戦略投資は総額1億ドルとなっています。さらに同年に行なったオンライン英語家庭教師サービス、VIPKIDに対するEラウンド投資は総額5億ドルとなっています。

またVIPKIDや宝宝樹のように、幼児向けサービスへの投資が多いことも特徴です。
ただ、雲鋒基金のウェブサイトにも記載があるように、その投資重点分野に教育分野は入っておらず、あくまでも基幹サービスであるeコマースや決済サービスを中心にしたサービスの一環として捉えていると考えられそうです。


参考

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