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全国に展開する留学塾、新東方を解説ーライバル好未来との違いとは? - 中国EdTech #6

第6回では、好未来と双璧をなす中国教育大手の新東方についてまとめます。
前回と同じように経営状況、サービス、投資の3つの側面から新東方を解説していきます。
分析を通して、新東方と好未来、両者の戦略の違いはなんなのか、解きほぐしていきます。

今回扱うトピック

  • 中国最大の留学塾、新東方とは?
  • 売上は好未来の1.5倍!新東方の経営状況
  • 新東方のサービスと強み
  • 教育分野にとどまらない新東方の投資戦略

中国最大の留学塾、新東方とは?

新東方は1993年に留学対策の英語塾として創業された、中国の代表的な学習塾です。現在は英語や留学対策だけでなく、幼児教育からK12向け学習塾も展開しています。2005年には騰訊との共同出資でオンライン講義サービスの新東方在線をリリースしました。
BAT等のインターネットプラットフォーマーと違い、もともと教材・授業のコンテンツを持っているのが大きな強みです。また中国全土をカバーしており、オフラインのデータを取得しやすいという強みもあります。

売上は好未来の1.5倍!新東方の経営状況

ここではサービスの紹介に入る前に、簡単に新東方の経営状況を解説します。

主にオフラインの塾を展開する新東方教育科技は2006年にNY証券取引所に上場しています。
また2005年には騰訊との共同出資でリリースした新東方在線科技は、その子会社で、主にオンラインのサービスを展開しています。(在線はオンラインの意味。)2019年に香港証券取引所に上場を果たしました。

下のグラフを見てもらえばわかるように、新東方はかなりのスピードで売上と総利益を伸ばしているのがわかります。
2018年度の売上高は24億4700万ドル、総利益として3億5400万ドルを稼いでいます。売上規模でいうと、好未来の17億1500万ドル(2018年)の約1.5倍を誇ります。2019年度は半年だけで、すでに売上高は14億5700万ドル、総利益として2億700万ドルを達成しています。

新東方のサービスと強み

新東方の強みと好未来との違い

新東方の強みは何よりもそのコンテンツです。すでにオフラインの塾では、幼児教育から成人教育まで、幅広い分野をカバーしており、そこで培ったコンテンツをオンラインのサービスにしたものが新東方在線です。また同時に、新東方AI研究所などで技術開発を行っています。

一方で前回も見たように、好未来と比べると、オフラインの塾におけるテクノロジーの導入は双師授業などに限られています。
また好未来との相違点として、さらに挙げられるのはサービスプラットフォームの開発に消極的な点です。部分的には学校向けサービスなど、toBサービスを展開していますが、基本的には自社のサービス内での授業の展開に止まっており、技術と教育資源を組み合わせて、他の教育機関などに提供する動きはまだ多くありません。

新東方のサービス全体像

以下に新東方のサービスの関連図をまとめました。

サービスとしては、通常の塾の新東方と、オンライン講義の新東方在線の二つに加え、双師課堂と学校向けサービスの4つに分類できます。
ここでは通常の塾で展開している細かいサービスまでは立ち入りませんが、通常の塾では幼稚園・K12・大学生/社会人を対象にした英語、K12補習・入試対策、資格試験対策、留学サポートなどを展開しています。

新東方在線

新東方在線では、上記の塾で培った指導内容をベースに同じように英語を中心にしながら、幼稚園から大人まで様々な年齢を対象にしたサービスを展開しています。上の図のように、新東方在線は新東方のオンライン上のサービスの集合体のようなサービスで、そこからさらに様々なサービスに枝分かれしています。
(ただし、特に名前がないものもあるので、その場合は簡単なサービス形態のみを書いています。)

酷学多納

3-8歳向けの英語学習サービスです。幼児向け英語学習アプリ、幼稚園向け教材、図書館と提携したオンラインの幼児教育教材、そのほかにも幼児教育用の教材の出版や、幼稚園児〜小学生を対象にした外国人教師のオンライン家庭教師サービスなどがあります。幼児向け英語学習アプリに関して言えば、外国人教師の授業動画や、童謡、絵本などを提供しています。内容は無料で閲覧できるものも多いです。オンライン家庭教師サービスになると、1授業100 元程度の価格になります。
下の画像はそれぞれ外国人教師の授業動画と絵本の選択画面です。


出典:搜孤

新東方在線

K12向けのオンライン講義サービスですが、特に名前はついていないので、名称は新東方在線のままです。補習・入試対策・英語試験などに対応したコースが用意されています。授業形態も豊富で、双師ストリーミング(1対複数のストリーミング講義+学習管理サポート担当教員)、オンライン家庭教師、オンライン講義の3つの形態があります。高校対策の授業だと、オンライン家庭教師で8回の授業で5600元程度、オンライン講義で一学期1500元ほどとなっています。(双師ストリーミングは価格がわかりませんでしたが、おそらくオンライン家庭教師とオンライン講義の中間くらいとなるでしょう。)

出典:新東方在線

職上

証券、会計士などの資格試験対策サービス。

酷学英語

よりハイレベルな英語のオンライン講義です。
内容としては、辞書を一冊読む!?ものから雑誌エコノミクスを読むもの、映画を観るものまで幅広いです。

新东方批改网

TOEFL、IELTS、SATの作文対策サービス。専用の問題を解くと採点してくれます。

上記の他にも大学院試験対策サービスや英語以外の外国語教育サービスなどを展開しています。

双師授業

新東方双師課堂

双師授業とは、ライブストリーミングのオンライン講義とオフラインの指導を組み合わせたサービスです。新東方双師課堂は、オフラインの教師教育ノウハウを利用して、補助教師を訓練し、特に優秀な教師が集まりにくい地方都市でも、質の高い授業とサポートを提供できる仕組みです。
ただし、この仕組みをパッケージにして他の教育機関に販売するのではなく、すでに塾が中国全土に展開している、という新東方の強みを背景に、あくまでも新東方の補助教師によるサポートを提供する仕組みをとっています。
下の画像は実際の授業風景です。

出典:芥末堆

学校向けサービス

OKAY智慧教育

OKAY智慧教育は公立学校向けの学習補助端末で、生徒用と教師用の二つの形式あります。生徒用の端末は、個人個人の到達度を把握させることで、授業中・授業後の復習の際の学習の補助を行います。教師用端末では、授業中に随時、生徒用端末で取得した各生徒の理解度を確認することができる他、授業設計などをサポートします。

新東方教育クラウド

新東方教育クラウドは主に大学向けの英語学習補助サービスです。教員・学生に新東方のオンライン講義やオンラインテストを提供します。また音声認識技術によるスピーキング訓練なども行うことができます。

新東方の技術開発

新東方も新東方AI研究所で研究開発を行なっています。

またn-BrainというAI+教育研究開発プラットフォームを運営しており、イリノイ大学、中国科学院自動化研究所、北京師範大学心理学部、スタンフォード大学、騰訊、網易などと提携しています。

教育分野にとどまらない新東方の投資戦略

新東方の投資は、主に新東方自身と、2018年に発足した傘下の新東方教育文化産業基金が行なっています。鯨媒体のインタビューによると、新東方教育文化産業基金のファンド規模は15億元となっています。
また、投資件数は少ないですが、エンジェル投資を行う東方新創などもあります。

年別投資件数と分野別投資件数

以下のグラフに新東方が2013年から2019年までに行なった投資案件をまとめました


  • 一つの企業に複数回投資している場合もあるため、年別投資件数と分野別投資件数は一致しません。

新東方の投資の特徴

新東方の投資は3つの特徴があります。

(1)幅広い分野への投資
近年、新東方の投資戦略は、相互補助型投資から、インダストリーチェーン型投資に転換しており、幅広い教育関連領域に投資しています。その背後には、投資によって、新東宝の業務のボトルネックを解消しようという発想があります。
例えば、アメリカの華僑向けECサイトである亚米网(yamiwang)への投資は、留学サービスと連携させた、留学生へのサポートと関連して投資されています。
現在新東方は0歳から25歳までの年齢をカバーしようとしており、幅広い年齢を対象にしたサービスに投資しています。また教師、生徒、保護者の3者に注目し、それぞれに関連する企業、そして技術に投資しています。

(2)投資先との連携
投資先との連携として一つ挙げられるのが、新東方からの技術、経営手法などの提供です。
一方で新東方側にとっては、亚米网の例で示したように、投資によって自社資本ではないサービスとの連携を強化し、教育分野と関連した分野と一体となったサービスネットワークと築くという戦略もあります。

(3)子会社の独立とIPOの可能性
直接に投資事業とは関係ありませんが、上記のサービスネットワークと関連し、新東方内部のサービスも徐々に子会社化・独立運営に向かう動きもあるようです。
例えば新東方在線は騰訊の戦略投資を受け、独自にIPOを果たし、また幼児英語教育の迈格森教育は新東方内部から分離して運営されています。インタビューによると、現在新東方在線内部でも将来的にさらに独立してIPOを行う計画もあります。


参考

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